第117話 成功の要因は、B社がとった勇気ある行動だった

「細井先生、先生の言う通り取引を小さくしてよかったです。」

 建設資材の卸売り業を営むB社の社長は、販売先の建設会社との取引が、なかなか大きくならず悩んでいました。父親から受け継いだ会社ですが、長年身を粉にして働いてきて、少しばかりは社員も増えたし、資本も増やしてきました。しかし、それ以上なかなか大きくできません。

 社長は、その建設会社との取引を大きくし、売り上げを伸ばしたいと考えていました。そして、建設会社の要求を一生懸命聞いて、「何とかうちの資材を採用してほしい」という「お願い営業」をしていました。

 この建設会社、なかなかの曲者で、B社と同業他社をうまく競わせて資材の価格を下げさせています。加えて、短納期競争もさせています。しかし、販売する側からすれば、価格を下げようにも納期を短くしようにも限界があります。したがって、建設会社の資材担当者に接待攻勢をかけるのが常套手段になっていました。

「社長、そんなことばかりやってて、会社は大丈夫なんですか?」「そんなことで売り上げが上がれば苦労はないですよ」

「いや、ほかに思いつかなくて・・・。」

「そんな取引先、取引をもっと小さくするか、やめてしまいなさい!」

 そんなわけで、冒頭の社長の発言は建設会社との取引を小さくした結果、営業・業務が回りだし、安堵した社長の口から出た言葉です。なぜ、主要な取引先の売り上げを落としてよかったのか?

 無理な価格競争、無理な短納期、無理な接待に振り回され、社内はオペレーションがぐちゃぐちゃです。社員は疲れ切って何かやろうとする行動力も、何か考える力もありません。ただ、目の前のやっつけ仕事をこなしているだけです。したがって、新しい顧客もできません。

 そこで、無理な要求は断り、接待もやめました。その結果、建設会社との取引は小さくなり、売り上げは落ちました。したがって、その分どこかで稼がなければなりません。

「社長、展示会を使って新規顧客開拓しましょう。御社にとって、もっといいお客様がどこかにいるはずです。それを探し出すための展示会です」

 売り上げが落ち込んで、気分も落ち込んでいた社長は半信半疑で取り組みました。しかし結果は、まあまあ成功です。新規顧客開拓に成功しました。それで、B社の売り上げも元に戻りました。そして、しばらくして、売り上げを小さくした建設会社との取引も元に戻りました。ということは、新規顧客開拓した分だけ売り上げが伸びたというわけです。

 なぜ、建設会社との取引が元に戻ったのか?「競争の原理が緩んで、他社も無理な要求を断り、接待をやめた」「建設会社はB社の納品の機動力を再認識し、取引が小さくなって困る状況に陥った」。ほかには・・・?「ショールーム営業で展示会を回した結果、会社全体がきちんとした営業ができるようになり、以前と比べようのないほどB社が魅力的な会社に成長した」ということです。

 現状を変えることには勇気が必要です。現状を変えて、売り上げが落ち込んだらどうしようと考えます。しかし、変えなければ現状から抜け出せません。

 例えば、ショールームや展示会を使って儲けようと思っても、世間と同じようなショールームを作り、同じような展示会を開催していたのでは、それは到底無理というものです。

 人と同じことを習慣的にやっていては成功しません。あなたには勇気ある行動が必要です。

 

 

 

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