第369話 AIでプラスのトレードオフを巻き起こせ

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このところAI関連のコラムばかり書いています。今回もAIです。別にAIに目覚めたわけではありませんが、何かと身近でAIにまつわる話題が多くありましたので、たまたまそうなっただけです。
さて、トレードオフという言葉をご存じでしょうか? 簡単に言えば「あちらを立てればこちらが立たず」という意味です。
例えば、仕事をすごく頑張ったから、自分へのご褒美としておいしい食事と甘いデザートを思いきり食べようとします。食事とデザートはハイカロリーですから、ダイエット(痩せるという意味)には向かないわけです。
これ以上太りたくない、でもおいしい食事はしたい。これは両立しませんので、トレードオフの関係にあります。中には、いくら食べても太らないという方がいますが、一般的には「食べたら太る」ことに間違いありません。したがって、トレードオフという言葉は「ジレンマ」のようなイメージを持ちます。
トレードオフという言葉には、若干マイナスイメージが付きまといますが、プラスの面もあります。プラスのトレードオフです。
このコラムの読者の多くは中小企業経営者です。中小企業経営者が苦労している点は、やはりお金と人材でしょう。新卒はなかなか採れない、採ったとしても2~3年でやめてしまう、というようなことが起きています。
新しい事業を始めようにも、人材がそろわなければ始めることができません。2~3年たって、そろそろ戦力になりそうだと思ったとたんに辞められては、泣くに泣けません。せっかく新事業のメンバーに入れようとしていたのに!
増員ができなければ、新事業をあきらめるのでしょうか? 何年もかけて温めてきた新事業を、簡単にあきらめるわけにはいきません。じゃあ、どうするかということです。ここでプラスのトレードオフの考え方が必要になります。
増員なしで新事業を始めようとする場合、どこかの部署から人を引っ張ってこなければなりません。他の営業部門、製造部門、管理部門、経理部門などから「2人ずつ出してくれ」と命令しても、現場は「そりゃあ困る。そんなことされたら残業が増えるし、そもそも適任者はいません」などと反論されるのがオチです。
この場合、人を減らされる運命にある部署は、同じ仕事を同じように続ければ、残業が増えるか仕事に穴が開くことになります。
そんなことになれば本末転倒であり、大切な既存事業がダメになってしまうかもしれません。それを避けて、新事業に注力するために、プラスのトレードオフという考え方が必要なのです。
簡単に言えば、人を減らされた部署は「AIに任せられる仕事は、AIを使って済ませる」ということです。そして、AIではできない仕事だけ人間の手で仕事をするということです。大きな意味では「合理化」とも言えます。
合理化というと、何かリストラとか首切りとか縮小といったイメージがありますが、そうではありません。
コンサルタントとして独立する前の職場では、管理者の立場で合理化の嵐を吹かせました。徹底的な合理化です。その結果、業績は劇的に改善しました。V字回復です。その時に役立ったのが、プラスのトレードオフの考え方です。
その頃は、まだAIというツールが一般的ではありませんでしたので、いかに合理化するか、すなわち「何をやって、何をやめるか」の選択を一生懸命に考えていました。
例えば、女性事務員を「事務作業ではなく、営業として戦力化できないか」ということを考えていました。女性陣は、事務職が一人減りますので、その分仕事が増えるのではないかと戦々恐々、不満たらたらでした。しかし、事務作業を合理化した結果、一人減っても今までよりも仕事量は増えるどころか減ったことに驚いていました。「案ずるが産むが易し」ですね。
ただし、この合理化戦略には注意すべき点がいくつかあります。その一つはコミュニケーションです。コミュニケーションと言っても、説明ではいけません。説得になってしまうからです。納得するようにコミュニケーションをとれねばなりません。ここは重要なところです。
現在はAIが進展していますので、合理化というよりも、プラスのトレードオフといった方がピンとくるかもしれません。いずれにしても、便利な世の中になったものです。その便利さを使いこなすかどうかは、あなた次第です。



