第307話 ルールを作ったら、それを守れ。そして会社のフェーズを上げよ



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「ウチの社員は欲がないんですよ」
「だから営業成績も悪いし、何人か入れ替えたいんです」

 当社のセミナーにお越しになった社長が、休憩時間にぼやいていた言葉です。

 確かに組織として何人かの人が集まれば、その中には必ず「ダメ」な人がいます。その組織全体から見てダメな人たちです。しかし、そのような人たちも、最初からダメだったわけではありません。組織の中でダメになっていった人たちです。

 仮にそうであれば、ダメな人たちを作ったその組織が「ダメ」だと言えます。そのダメな組織を作った張本人は社長です。したがって社長自身が反省をして、ダメな組織を作り直さなければなりません。ダメだとぼやいている暇はないのです。

 冒頭の言葉には続きがあって…
「業績の悪い社員はボーナスを減らしています」
とのこと。

 ここまで聞いて、非常に残念な思いがこみ上げてきました。なぜならば、自身の身近な会社でも同じような考え方の社長がいたからです。その記憶がよみがえってきたからです。

 その会社は中小企業でしたが、地元では有名な会社でしたし、業界内でもその地位は確立されていました。ドミナント戦略で支店を次々と出展し、勢力を拡大してきました。立派な会社だったと言えるでしょう。

 多くの支店があれば当然、業績のいい支店、悪い支店ができます。地域差とかライバル関係が大きく影響するでしょうし、マネージャーの管理能力もあります。

 したがって、一般社員の働きが悪いということではありません。管理の問題、もっと言えば「しくみ」の問題が大きいと考えられます。

 そうであるにもかかわらず、この会社の社長は業績不振の責任を一般社員に押し付けました。そんなことをして社員がやる気になるわけがありません。その結果、業績不振の支店は増々業績が落ち込みます。そんなことを繰り返しているのです。

 そうは言っても、長い歴史と地域の信用力で、業績は伸びないものの、現状維持で何とか踏みとどまっています。しかし今後、社員の不満が顧客に伝わり、顧客の離反につながるとも限りません。今のうちに次の一手を打たなければならない状況です。

 さて、どのように手を打てばいいのか? 社員は普通に一生懸命働いている。それが業績に表れないところに問題があります。

 多くの企業でいえることですが、社員は「属人的に一生懸命になっている」ことが挙げられます。要するに、社員一人一人は良かれと思って仕事をしていますが、それは部分最適であり、全体から見れば最適になっていない可能性があるのです。そうです、全体最適でなければなりません。

 なぜそうなってしまうのか?ということですが、それは一にも二にも「しくみ」がないことが原因です。もっと簡単に言えば「ルール」がない、あっても守られていない事です。

 ルールというと何か窮屈な感じがしますが、実はそうではありません。人はルールがあるから動けるのです。ルールがあると活動しやすくなります。

 例えば、真っ白な紙に「富士山の絵を描いてください」といったら、皆さんはどのように描きますか? 中には、紙の端っこの方に小さく書く人もいるでしょうし、中には紙の真ん中に大きく書く人もいるでしょう。どうやって描けばいいか迷う人もいるでしょうね。

 ところが「この紙の中央の黒枠一杯に、赤のボールペンで大きく富士山の輪郭だけを描いてください」といったらどうでしょう? 分かりやすいですよね。描きやすくありませんか?

 この「中央の黒枠一杯」「赤のボールペン」「富士山の輪郭だけ」というのがルールなわけです。したがって、ルールがあったほうが分かりやすくて行動しやすいということです。

 前出の会社では、社員は一生懸命に絵を描いていますが、ルールがなかったり、あっても守らなかったりするために、その働きの努力が業績に表れないのだと考えられます。

 そうであれば、ルールがなければルールを作る。あっても守られていないならば、守るような風土を作ることが社長の仕事です。こういった組織を「官僚制組織」といいます。

 当社は多くの会社を間近に見てきましたが、中小企業はこのような会社が多いと感じます。特に、業績が急に伸びた会社は、業績の伸びに社長以下社員のモラルが追い付いていないことがあります。ここを改善することで業績だけでなく、会社のフェーズも上がります。

 ただ単に、売り上げを伸ばせばいいというものではありません。やはり会社の、また社員のフェーズを上げることが重要です。そうすることにより、ショールーム営業も板についてきます。

 あなたの会社はフェーズが上がっていますか?

 


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