第154話 本を5冊買った、ある経営者の覚悟

 当社は本を1冊出版しています。タイトルは「商流をつくって半自動的に儲かり続ける 業種×業態別ショールーム営業戦略」です。実は、もう1冊出版しているのですが、エッセンスブックと言って70ページほどの小冊子ですので、本とは区別しています。

 この本は昨年の12月に出版されました。出版社から日経新聞に広告が出るたびにAmazonの在庫がなくなり、2週間くらいは在庫切れの状態が続きます。回復した後も少しづつ在庫が減っていますので、そこそこ売れているようです。

 ある会社に呼ばれて個別相談(スポットコンサルティング)に行った時のことです。

「先生、お待ちしていました」
「先生の本を読んで感銘を受けました」
「是非、うちにコンサルティングをお願いします」

 オーナー経営者の方はこう言って迎えてくれました。個別相談を始める前からこのように言っていただくのはありがたいのですが、当社のコンサルティングがお客様にマッチするか検証しなければなりません。

「社長、ちょっとお待ちください」
「御社のことをまだお聞きしていませんし、それに当社のコンサルティングを説明していません」
「それが済んでから判断しましょう」

 このように申し上げました。最も避けたいのは、お互いに「こんなはずじゃあなかった!」ということです。

 当社のコンサルティングがお客様の期待するものかどうか、お客様の要求に当社のコンサルティングが応えられるかどうかです。ここを検証しないままコンサルティングに入ると、うまく行かないケースが出てきます。

 したがって個別相談では、2時間かけてじっくりお互いの要望や状況を確かめます。そしてこれなら大丈夫だと確信を得れば、コンサルティングをお受けします。

「先生のコンサルティングはもうわかっています」
「ほら、ここに先生の本が5冊あります」
「私はもちろん、取締役も読みました」

 そう言って、この経営者の方は当社の本を見せてくれました。その本には付箋がびっしり貼ってあります。本当にじっくりと読んでいただいたものだと分かります。

 しかし、そうは言っても細かい条件もありますので、その辺はきちんとご説明し、後日、正式に申し込みをいただくことになりました。

 しかし、当社の本を5冊も買っていただいたとは驚きです。1冊買って回し読みすることが多いのですが、この経営者の方は自分専用に1冊持っていました。あとの4冊は取締役が持っていました。

「先生、もう待ったなしなんです」
「先生のコンサルティングに社運が掛かっています」

 こう話されれば、やるしかありません。この経営者の方は、相当な覚悟を持って当社にコンサルティングの依頼をしてきたと思われます。そうであれば、当社も同じ覚悟で取り組まなければなりません。

 このオーナー経営者の方は、当社のセミナーにご参加いただいていません。本を読んだだけです。それでコンサルティングの依頼をされました。それだけ本から伝わるものがあったのでしょう。加えて、相当な覚悟を持っているものと思われます。

 事業を拡大させるとか建て直すとかの場合、小手先のテクニックでは通用しません。必要なのは、経営者の方のチャレンジする勇気と覚悟です。その覚悟が社員に伝わるから、大きな仕事ができるのです。

 本を5冊買っていただいて、その本には付箋がびっしりついているのを見ると、この経営者の方の覚悟が見えます。それに応えられるよう、当社も覚悟を決めてコンサルティングに取り組みます。

 1年後、この会社がどのように成長しているか楽しみです。

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