第370話 世の中にはお金よりも大切なものがある

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「先生、世の中にはお金よりも大切なものがありますよね」
当社のクライアントの社長が、コンサルティングの最中にボソッとつぶやいた言葉です。何の話かと聞けば、損をする取引だったけれども、約束通り自社製品をお客様に納品・販売したということです。
ここでは詳細を割愛しますが、その取引で小さくはない金額を失ったようです。「損して得とった」という結果になればいいのですが、その「得」とは何か?です。「得」は「徳」とも言えますが、その正体は「信用」です。信用はお金では買えないからです。
「そんなの当り前じゃないか」とか「今さら何を…」とか思われるかもしれませんが、実際にその場面に置かれると、そうは簡単に損できない自分がいます。要するに「頭でわかっていても、実際に実行しようとすると、それができない」という方がほとんどです。
「常々言っていることと、今やろうとしていることが違うじゃない!」と言ってみても「それはそうなんだけども…」と言ってはぐらかせてしまいます。
当社のセミナーでは、冒頭で「成功するかしないかは、能力や技術の差ではなく、やったかやらなかったかの差である」と申し上げています。さらに「頭でわかっていることと、実際にできることでは次元が違う」とも。
例えば、ビジネススクールの経営理論の先生が、商売がうまいかというと、そうではありません。経営理論を学んで、それを実践すれば大成功して大金持ちになれるはずですが、そんな先生を見たことも聞いたこともありません。
-塾の先生が人気になって頻繁にメディアに出ていますが、それは商売ではなく、その方のパーソナル性で売っているものと思われます-
そもそも、ビジネスのやり方に正解はありません。成功したやり方が正解なのです。ビジネススクールには正解があり、その答えを教えてくれるところです。したがって、学校と実際のビジネスの現場では、教えるコンテンツが異なっています。
実際のビジネスでは、自分自身で自分のやり方を探り、それをもとに成功をつかむのです。やり方や考え方が滅茶苦茶でも破天荒でも、それで成功すれば成功です。誰にも文句は言わせません(公序良俗に反してはいけませんが…)。
人は「信用はお金では買えない」と分かっていても、いざ自分がその立場に立ってみると、やっぱり「利益」を取ります。それで信用がなくなるかもしれないと分かっていても、目の前の利益を取りがちです。悲しい性を持っているわけです。
ところが本当に成功する人は、損をしても「徳」を取ります。信用を失うことがいかに怖いか知っているからです。
「口コミ」という言葉があります。当社のコンサルティングでは、導線設計に「ファンに口コミを使ってよい噂を広めてもらう」という戦術について解説しています。
口コミに必要な要素は5段階ありますが、そのもっとも重要な要素が「信用力」です。ある工務店の社長は、自社の責任の範疇であればもちろん、自社物件であれば、自然災害によって被害を受けた家について、迅速かつ全力で手直し・復旧に取り組みます。それがその工務店の信用につながり、お客様が行列を作る要因となっています。
その工務店のサービスレベルは、お客様の期待値を大きく超え、感動のレベルもしくは驚きのレベルにまで達しています。
本来であれば手離れの良さを求めたくなりがちですが、その工務店は、とことんお客様の立場に立って家づくりを行い、お客様の困りごとを見過ごさないサービスで「日本一ファンが多い工務店」として知られています。信用がお客様を呼び、お客様がお客様を呼ぶ構造を作っているのです。
冒頭の社長は、取引でお金を損しましたが、信用という徳を得るものと考えられます。信用は一度に出来上がるものではなく、積み木を積むように、一つずつ積み上げていくものです。「そんなこと分かっちゃいる」けど、簡単にはできないところに、実践の難しさがあります。
当社では、導線を設計した後は、その導線が正しかったのか、実際のイベントを開催して実証していただいています。導線を設計するのは机上でできますが、それをうまく回す作業は、実際にやってみないと分からないことがたくさんあります。
その導線を修正することで、自社に会った導線を作り上げる重要性を、クライアントの社長にはご理解をいただいています。これが本当のコンサルティングだと考えています。



