第344話 価格転嫁できない中小企業は、まずこれをやれ



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 先日、NHKの番組で「原材料の価格転嫁が難しく、なかなか賃上げができない」という中小企業の実態を放送していました。円安、インフレで原材料価格が高騰しているにもかかわらず、価格を上げられないと嘆く経営者を紹介していました。

 この会社は、元請け企業から金属部品の製造を請け負っています。このような下請け企業は他にもたくさんあるため、どうしても価格競争になります。もし、価格転嫁して納入価格を上げれば、他社に仕事を奪われてしまうのではないかという恐怖におびえています。

 かといって、価格転嫁できなければ賃上げもできず、社員の労働意欲が低下するかもしれません。そうなれば、最悪の場合は退職してしまうことも考えられます。

 そこで、これまで行ってこなかった「作業の見える化」をして無駄を省き、コスト削減に取り組もうというわけです。

 さて、NHKのカメラがこの会社の事務所に入ったところを映していました。その映像を見た瞬間に「この会社は価格転嫁も賃上げもできないな」と思ったのです。なぜそう思ったのか?

 整理・整頓(5S)ができていないからです。金属部品メーカーで下請けのビジネスモデルであるにもかかわらず、整理・整頓ができていないということは、すなわち儲からないということです。

 映像を見る限り、お世辞にもきれいとは言えない事務所の中。机の上の資料は山積みになっており、すぐには取り出せない様態。書類の山がいくつもあるため、実際に使える机のスペースは半分以下。「え!これでコスト削減のシステムを導入しようとしているの?」と、あきれ返ってしまいました。

 このままいくと、この会社は、作業の見える化のシステム構築に多額の資金を投入しただけで終わってしまうのではないかと、心配をしてしまいました。

 番組は「中小企業が価格転嫁できない現状と、それを解決するための具体策の紹介」という趣旨であったように思います。したがって、番組はそれで成立しています。

 この番組を見た方は「作業のデータ化とか見える化が重要であり、そのためのシステムに投資をすればいいんだ」と考えるかもしれません。もしそうなら大変危険です。当社の見方はそうではありません。そんなのは二の次だと言いたいです。

 要するに、いくらいいシステムを導入しようが、それを使いこなすのは人間だということです。その人間が、事務所の中の整理・整頓ができていないにもかかわらず高価なシステムを導入しても、使いこなせないのです。これは、いくら立派なショールームを作っても、本当の使い方を知らなければ、ただの装置になってしまうのと同じです。

 システムを導入すれば、売り主から丁寧に使い方を教えてもらえるでしょう。ただそれは表面的な使い方にすぎず、使いこなすための、本当の意味での社員教育とかデータの活用方法とかは教えてくれないでしょう。それは、自社で作り上げていくものだからです。

 もちろん、そういったシステムに投資してはいけないと言っているわけではありません。そうではなく「その前にやるべきことがあるでしょ!」と言っているのです。

 当社のコンサルティングでいえば、

「ショールームを作る前に導線を作ってください」
「導線を作る前に社員のフェーズを上げてください」

ということです。

 ショールームは優秀な集客装置です。しかし「装置」でしかありません。装置は使いこなす「人」によって価値が決まります。

 装置を使いこなすためには「導線」が必要です。見込客開拓から契約までの導線です。導線があるからショールームが回るのです。

 優秀な導線を作るには、社員の「フェーズ」を上げなければなりません。フェーズを上げずに売り上げだけ上げても、それは「膨張」です。膨張はいずれしぼんでしまうか、悪くすると爆ぜてしまいます。

 前出の企業でいえば、まず整理・整頓ができるようになるべきです。そのためには、なぜ整理・整頓が必要なのかを全社員に理解してもらう必要があります。そして何より大切なのは、社長自らが整理・整頓できるようになることです。そうして、ようやくシステムを使いこなすことができるようになるのです。

 システム導入は、目に見える投資戦略です。整理・整頓は、企業風土の再構築や価値観の共有といった、目に見えにくい組織戦略です。見えにくいですが、投資戦略を支えるための組織の構築を忘れてはいけません。

 ショールーム営業でいえば、ショールームを作る前に導線を作ってください。そして、その導線を維持発展させるためのチームワーク作りが重要です。

 


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