第326話 教育の効果はしくみの上で発揮される

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「社員教育…、一生懸命やってるんですけどねぇ~」
先日、当社のセミナーにご参加になった社長の嘆きの言葉です。社員教育に力を入れている社長は多いでしょう。しかし、その効果を実感することはあまりないと思います。
実際、サラリーマン時代のことを思い出すと、研修とか勉強会とかに、よく出席していました。自分から進んで研修に参加したこともありますが、ほとんどが会社から「行ってこい」と言われて参加したものです。
サラリーマンですからどうしても受け身になってしまい、実際に研修が始まってみないと何の研修なのか、その内容がわからないこともありました。今から考えると恥ずかしい限りですが、サラリーマンとはそんなものかもしれません。
サラリーマン時代に様々な研修や勉強会に出席してきましたが、一つ印象に残る研修がありましたのでご紹介します。
それは中部地方の小さな町の郊外で、廃校になった建物を利用して、4泊5日で軍隊を体験するような研修でした。
小高い山の上にある建物でしたし、監視?されていましたので、脱走?することはできません。教官は軍隊上がりのゴリラみたいな人ばかりでしたので、誰も立ち向かうようなことはできません。
数百人規模で研修生を集め、それを組と班に分ける。一組4~50人で、一班10人程度。組と班ごとに行動し、連帯責任もある。就寝と起床時間は決められており、夜の見回りと朝の点呼もある。毛布のたたみ方から枕を置く位置まで決められていて、できていなければやり直し。
昼間は講義と実地訓練。講義は、団体行動の基本からチームの統率の仕方まで。実地訓練は、行進の仕方から情報伝達の実践まで。
一言でいえば、敵に打ち勝つための理論と実践を身に着けるというものです。まさに軍隊。軍隊生活を疑似体験する研修といってもいいでしょう。
軍隊ですから、返事は大きな声で「ハイッ!」。講義や訓練の最中に発言するときは、高校野球の選手宣誓並みに声を張り上げます。まさに軍隊生活が4泊5日で身につくわけです。
そうやって軍隊生活を身に着けた研修生(社員)が翌週会社に出社すると、勤務態度が一変します。
朝、事務所に入ってくるなり「おはようございます!」と大きな声を張り上げます。行動はきびきびして無駄がありません。上司に対する態度は尊敬に満ち溢れ、部下に対しては優しく思いやりがあるように見えます。人間が変わったようです。
ところが、出社2日目になると声の張りはなくなり、行動も緩慢になったように見えます。そして、3日目になると全体的にかなりトーンダウンし、4見目になると元の人間に戻ります。朝の挨拶の声は聞こえませんし、行動は明らかに緩慢になり、上司や部下への態度も横柄になります。4泊5日の研修は何だったのかと思えるような変わり方です。
この研修は会社を挙げて参加していましたので、このような人を、自分を含めて何人も見てきました。例外なく、研修に参加した社員はこうなります。元に戻らなかった社員はいません。
長々と経験談をお話ししましたが、要するに、研修というのは受け身である限り効果はほとんどないということです。この研修については、いい思い出にはなりましたが…。
それでは、どのように研修を企画すればいいかということです。もちろん研修の目的を明確にし、受講者に理解してもらうこと。受講した知識やノウハウを実践の場で活用してもらうこと。そして、その効果を測定することが必要でしょう。そうでなければ、ただ単に研修を受けただけで、何の役にも立ちません。
これは研修の効果を発揮させるためのルールといえます。しかし、これで効果を発揮できるかというと、そうではありません。全体的に効果を発揮させるには「しくみ」が必要です。
自分から、こういったテーマについて研修を受けたいと考えて受講するならば、自分自身で効果を発揮できるように、受講中も受講後も行動するでしょう。このテーマについてもっと深堀したいとか、うまくいかないので何かヒントが欲しいとか、そういった状況にある社員に参加させることです。一方、そのやり方は、その人のみに効果があるわけで属人的になってしまいます。
多くの中小企業に決定的に不足しているのは、研修の知識やノウハウを広めるしくみです。しくみがあるからこそ、研修を受講した人だけでなく、受講していない人にもその効果が及ぶというものです。
人材育成のための研修や勉強会は大切です。研修を企画するのはいいですが、その前に、ノウハウが伝播するようなしくみを作っておくことです。当社の例でいえば、まずショールーム営業のしくみ(導線)を作ってください。そうすれば急速にノウハウが広まり、その効果は大きなものになるでしょう。
あなたは、どんな研修を企画していますか。研修に参加させる前に、しくみづくりはできていますか?



