第145話 55歳からが本当の勝負 ~あなたは何ができますか~

 20代のころは「こんな会社辞めてやる」などと思って、本当にやめる方が結構います。20代男性の離職率は40%近くになるというデータがあります。

 ところが30代後半から60歳までは離職率は低下します。家庭を持って家族を養っていかなければならない状況に陥り、辞めたくてもやめられないという状況が見えてきます。また、定年間近で「我慢しよう」などと思っている人もいるでしょう。

 しかし、中には思い切って別の世界に飛び込む人もいます。50代半ばで大企業を退職し、商売を始めた人がいます。大企業で管理職についていた人ですから収入はソコソコでしたでしょうし、定年前にはもう一つ役も上がったかもしれません。

 そういったものをすべて捨てて商売の世界に入ったのですから、相当な覚悟と勇気があったに違いありません。本当にやりたいことがあったのかもしれませんし、もしかしたら人間関係がうまく行かなかったとか、仕事自体に疑問を持っていたかもしれません。

 いずれにしても50代半ばという脂の乗り切った時期に、また、お金も必要な時期に独立・起業したというのですから「お見事」というほかありません。

 しかし、シニア世代が独立・起業しても成功の確率は低いと言われています。コンサルタントも同じで、「会社員時代に培った経験を生かすにはコンサルタントだ」という発想になるのは自然でしょうが、そう簡単にクライアントが見つかるわけではありません。

 大企業の部長職くらいになれば有名大学を卒業しているし、頭もそこそこいいし、論理的思考もできるし・・・。ところが、そんな会社員時代の役職など何の役にも立たないことが、退職してから分かります。

 反対に、そういう人の方がコンサルタントとして役に立たないケースがほとんどです。大企業の大きな組織やしくみの中でしか働いたことがないわけですから、中小企業の経営者の苦労など分かるわけがありません。何しろ、一言命令すれば部下が何でもやってくれたのですから。

 そういう人は大企業の論理を持ち出して、こうあるべきと「べき論」を述べます。自分はそれで満足するでしょうが、クライアントからすれば全く役に立たない「迷惑な人」くらいにしか思われません。中小企業の経営者は、一緒に泥水をすすってくれるような人でないと信用しません。舌先三寸では見透かされてしまいます。

 こうして大企業出身者のシニアコンサルタントはコンサル業界から引退します。これが、シニアがコンサルタントとして成功しない一般的な理由です。

 前出の人はコンサルタントではありませんが、自分で小さな会社を興して商売を始めました。会社員時代の人脈を生かし、また、新規顧客を開拓したりで、まあまあ順調に行っているようです。

 大企業にいても退職してしまえば、ただの人です。それまでの役職なんか何の役にも立ちません。定年延長で会社に残ったとしても、今までの部下が上司です。それならいっそのこと、人生をかけて自分のやりたいことを一生やり続けられる道を選んだということです。

 55歳からが本当の勝負です。経営者のあなたは50代で何ができますか?

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