第136話 ショールームは広ければいいというものではない

 10万人規模の、ある地方都市で建設・土木業を営む会社がショールームを作りました。街の中心部から外れた郊外の丘陵地に、さほど使われていない広い土地があり、そこを活用する目的です。

 目の前には片側1車線の国道が通っていて、車がビュンビュン飛ばして走り去ります。最寄りの駅からはかなり遠く、車でないと行くことができない距離です。

 この会社は建設業で幅広く事業を展開しており、新築住宅や住宅リフォームも手掛けています。これまでも小さなショールームを本社の社屋横に構えていましたが、手狭になったことと、知名度を高めて売り上げを増やし、もっと儲けようという意図で郊外にショールームを新設オープンしたというわけです。

 郊外の広い土地にオープンしたショールームだけあって、床面積はかなり広いです。ざっと見ても400~500坪くらいはありありそうです。したがって、ショールームの前の駐車場スペースはスーパーマーケット並みに広くとってあります。このような広いショールームはメーカーでさえも作りません。

 建設当初から広すぎるのではないかという懸念はありました。広いということは、何もかもが数多く必要だということです。人、展示品、維持費・・・、いわゆる固定費です。

 この固定費を賄い、さらに利益を出すためにはどれほどの売り上げが必要かちょっと想像がつきませんが、本業が立派なので何とかやっていけるだろうという世間の噂でした。

 周辺のリフォーム需要を一手に囲い込もうという戦略なのでしょうが、リスクが大きすぎます。それよりも、いろいろな製品を展示をすれば、それを見に来てくれるお客様がいるという安易な考え方が気になります。たくさん展示して、お気に入りの製品を選んでもらおうという考え方にも違和感があります。

 なぜなら、一般の施主が住宅設備機器製品を選ぶとき、専門家である工務店やガス・水道工事店の意見を聞き入れることがほとんどだからです。もちろんこだわりを持った施主は、そうではないことが多いです。しかし、このような施主はそう多くありません。キッチンはこだわりがあるけどトイレは特にないとか、照明は何でもいいとかいう方が多いです。

 そうなると、たくさん展示する意味はなくなります。逆に、あれもこれも見せられて迷ってしまうことも考えられます。そして「何がいいか提案してください」ということになります。

 ショールームは「何を展示するか」ではなく、「何を展示しないか」で考えるべきです。何を展示するかで考えれば、あれもこれも、何もかも展示しなければならなくなります。

 そうではなく、何を展示しないかで考えることにより、本当に展示しなければならないものが見えてきます。「足し算」ではなく「引き算」で考えるということです。

 このショールームが順調に集客して商売ができているかどうかは分かりません。定期的にイベントは開催していて、その時は大勢の来館客がいますが、平日の何もない日は車が数台とまっている程度です。

 当社が心配することもないのですが、これほど広いショールームですから気になります。当社は「もったいないショールームをなくしたい」という信念を持っていますので、何とか成功してもらいたいものです。

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