第49話 気が付いてみれば周りはイエスマンばかり 

「先生、最近、俺に意見する人間が誰もいないのに気が付いたんだけど、これって本当はマズいんじゃないかな」

「ん~そうですねぇ、社長の経営が素晴らしく、会社が順調に行っているから誰も何も言わないのかもしれませんね。しかし、社長自身が、社長にモノを言える人間を、知らず知らずのうちに遠ざけてしまったということはありませんか?」

 これは当社のクライアントである、ある中小卸売業の社長との会話です。父親である先代の社長の跡を継いで2代目社長に就任し、強烈なリーダーシップで会社を成長させてきました。先代社長のブレーンはとうの昔に引退し、自分のブレーンも定年が近づいてきていることもあって、そろそろ自分の息子に譲ろうかと考えていました。ところがコロナ禍によって経済情勢が不透明になってしまったため、もう少し頑張ろうと思い直したその時、ふとこんなことに気が付いたというのです。これまでがむしゃらに働いて業績を上げ、社員にまっとうな給料を支給し、自身は個人保証のリスクを負いながらなんとかここまでやってきました。無我夢中だったというのが本当のところでしょう。

 以前、NHKのテレビの特番で、第二次世界大戦にドイツ軍の兵士として従軍した人のインタビューが放送されていました。その兵士だった人は「今の世の中は問題が数多く存在するが、たとえそうだとしても、あの戦争の悲惨さから比べれば今抱えている問題は問題にならない」「いくら今、問題が多かろうとも、あの戦争をしていた時代よりも今のほうがずっといい」という内容のものでした。

 確かにその通りだと思い、コンサル仲間の心理カウンセラーにたまたまこの話をしたところ、この方が言うには「細井さん、それは少し解釈が違うところがあって、今の世の中に問題があっても、戦争していた時代よりはいいと言ってしまうと、その問題が少しずつ大きくなっていき、ついにはまた戦争へと突入していくんですよ」「だから問題を放置してはいけない。問題があればきちんと意見を言う人が必要なんです」ということでした。

 そういえば、最近の政治家の発言や世界の情勢を見聞きすると、自国主義とか○○ファーストとかいう言葉が飛び交っているように思います。これが高じてくると、また戦争へと突き進むのではないかという懸念が出てきます。モノを言えない世の中や政治が戦争への入り口となるのかもしれません。

 中小企業のトップは自分一人で悩み、判断し、決断することが多いです。その時に自分の意見に味方してくれる部下がいたらどんなに心強いでしょう。しかし間違えてはいけません。部下は責任を取りません。責任を取るのは社長です。重要な決断をするとき、周りがイエスマンばかりだったらどうでしょう。社長の判断に意見の言える部下がいなければ、冷静かつ適切な判断ができるでしょうか。自分の意見や判断に反対意見を言われれば気分のいいものではありません。癪に障ることもあるはずです。しかし裸の王様になるよりましです。

 当社はショールーム営業コンサルティングを行っている会社ですが、最近、コンサルティングの最中にこのような相談を受けるようになりました。コロナ禍で企業業績が見通せなくなる中、事業承継という課題が浮き彫りにされたからだと考えています。ショールーム営業コンサルタントの立場からすれば事業承継は専門外ということになりますが、クライアントは当社を信頼してご相談されているわけですから、そんな場合は当社の長年の経験から参考になりそうなご意見を差し上げることにしています。

 中小企業の社長は孤独です。業界の集まりに行けば、経営者同士で色々な話もできる間柄の人もいるでしょう。しかし、本当に腹を割って本音で話せる人はいないはずです。当然ですよね、自社の強みや弱み、問題点や課題を取引先や同業他社に教えられるわけがありません。

 部下が意見を言わない、周りはイエスマンばかり。このような経営者の方は、中小企業向けコーポレートガバナンスの導入をご検討ください。当社は、アドバンストコースとして、コーポレートガバナンス導入プログラムをご用意しています。中小オーナー企業経営者の方にとっては非常にハードルが高く、ショールーム営業コンサルティングを受けていただいた方のみのプログラムですが、必ずお役に立てると思います。

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