第166話 ビジネスモデルの違いをどう活用するのか、そこが経営者の腕の見せ所
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建設業でも、ビジネスモデルが異なれば異業種のように営業方法が異なります。例えば公共工事で収益を上げている会社は、行政に対しての営業活動になります。営業活動と言っても、「うちに工事を依頼してください」という営業ではありません。入札メンバーに入れるようにすることが、その活動となります。
そして経審の点数を上げることや、入札ランクの上位へ入ることが重要になります。それによって大きな工事の入札に入ることが可能になりますし、行政からの信用も付くことになります。
一方、民間工事を請け負う場合は、ショールームやモデルハウスを使って自社の施工能力や製品品質をお客様に体感してもらい、指名をもらうことが重要になります。宣伝・広告で広く認知をしてもらう活動や、多くの顧客の中から本物の見込み客を探し出す活動です。
時間の使い方にも違いがあります。公共工事の場合は、予算が付く6月ころから動き出し、翌年の2月ころまでが工事の佳境です。したがってこの期間以外は、「やる仕事がない」状態です。
一方、民間工事の場合は、特にそう言ったことはなく、常に受注を目指して活動しているイメージです。
「先生、うちは公共工事がメインなので、民間工事を受注するのはどうも勝手が違います」
「ショールームはあるんですが、集客して契約するノウハウが不足しています」
ある建設会社の社長はこのように話します。
「公共工事と民間工事ではビジネスモデルは全く違うんですが、なんで民間に参入したんですか?」
「そんな言い訳じみたことを言っていても、らちは明きませんよ」
どうやら公共工事が不況の折、民間工事に手を出したのですが、勝手が違いすぎて長年困っていたとのこと。それで、藁をもつかむ思いで当社にご相談にお越しになったということです。
聞けば民間工事の社員は、公共工事からの異動組ばかりとのこと。彼らは公共工事のやり方が染みついていて、なかなか民間工事になじめません。中途で採用した社員はわずかにいますが、未だに戦力にはならず、公共組が幅を利かせている状態です。したがってショールームを活用できず、民間工事の業績はいまいちの状態が続いています。
そんな中でも生きてこられたのは、公共工事需要が回復して利益を上げられるようになったこと、その利益を民間工事につぎ込んでいることで帳尻を合わせていることが挙げられます。
「社長、思い切って公共と民間で独立採算制にしたらどうでしょう」
「公共組は、自分たちの稼いだ利益を持っていかれていると不満があります」
「民間組は、公共組が助けてくれるだろうと、おかしな期待感があります」
「独立採算にして収支を明確にした方が、社員のやる気は出ると思いますよ」
このような提案をしました。
この会社の場合、ビジネスモデルの違いを、民間工事を受注できない理由にしています。そんな言い訳をしていても工事の受注にはなりません。言い訳するだけ無駄です。それに会社全体の収支がごちゃ混ぜで、自分たちが会社にどれだけ貢献しているかも分からない状況です。それで「がんばれ!」では頑張りようがありません。
仮に、民間組がまかっかの赤字だったとしても、それはそれでいいのです。それが民間組の実力だからです。それが分かったうえで「じゃあ、どうする?」の議論になるのです。ショールームが活用できていないのなら、どのように活用し、どのようにそれを売り上げにつなげていくかの議論です。
「先生、共通費の案分の仕方は・・・?」
「社長、そんなもんルールを決めりゃいいんですよ。売り上げ案分でも何でもいいです!」
「細かいことにこだわってはいけません」
「会計的に整合性が取れればそれでいいですよ」
と申し上げて個別相談を終了しました。
大切なことはビジネスモデルの違いを嘆くのではなく、ビジネスモデルを活用してどのように売上を上げるかということです。そこが経営者の腕の見せ所です。
建設業で言えば、当社のお客様は民間工事の方が多いですが、公共工事も民間工事もやっている会社もあります。その場合も、それぞれのビジネスモデルを活かして工事の受注をされています。
当社はビジネスモデルの違いにかかわらず、ぞれぞれの会社に最適なショールームの形態、ショールームを活かした集客方法、自社の強みを活かした契約方法をアドバイスしています。