第225話 ショールーム担当部長の戦略が役に立たない本当の理由
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「先生、今後の戦略が決まりました」。ある機器メーカーのショールーム担当部長からメールが来ました。どんな戦略なのか添付資料を開いてみると、単なる市場調査のデータです。
SNS広告を出稿して、クリック率を年代別、地域別に集計したものです。市場調査すること自体悪いことではありませんが、注意すべき点があります。それは何かというと、「誰が」「どのように」分析し、その結果を、「どのようにビジネスに生かしていくのか」を明確にすべきだということです。これを「分析の3点セット」と言います。
これができていない企業が圧倒的に多く、調査しただけ、分かったふりをするだけで終わってしまいます。データを印刷し、役員や担当者に配布し、一読しただけで書類ファイルにしまい込む。そして二度と日の目を見ることはない。こんな企業が多いのです。
メールのやり取りでは詳しい話が聞けないと判断し、さっそく部長に電話を入れてみました。
「部長、このデータは誰が分析しましたか?」とお聞きすると、「ええっと、私です」とのお答え。
「で、ここから何が分かるんですか?」とお聞きすると、「やはり○○地区の方が商売しやすいから、そちらに営業拠点を…」「それで、今回が初めてだから、何度も繰り返して…」とのお答え。
「調査を何度も繰り返しても、結果は同じですよ」
「失礼ながら、この程度の調査なんか、御社の製品からすれば調査しなくてもある程度読めるじゃないですか」
「部長のおっしゃる戦略は正しいとしても、問題はその戦略を実行できるかということですよ」
「データから顧客層は読めますが、顧客像はどのようにお考えですか?」
部長のお答えは「・・・」
これでは戦略とは言いながら、ただ単に営業エリアの狙いを定めただけになっています。
この会社の本当の問題点は戦略にあるのではなく、ショールーム担当部長をサポートする人材、参謀役、後ろ盾がいないことです。いくらいい戦略を立案しても、部長一人では何もできません。
そこを何度もご指摘しているにもかかわらず、営業的な戦術・戦略にこだわっていることが問題だと言っているのです。もちろん戦術・戦略は重要であることに違いありません。しかし、この会社が少しも前進しないのは、戦術・戦略を実行できないことが原因です。
これまでやんわりと指摘してきましたが、今回は「堪忍袋の緒が切れた(?)」状態になってしまいましたので、覚悟を持って経営層に進言するつもりです。
当社は、どこの団体に属しているわけでもなく、どこかのエージェントから仕事を回してもらっているわけでもなく、迷惑をおかけする取引先もありませんので、お客様の利益のためにあえて苦言を申し上げることがあります。今回もそのつもりです。
「間違っていることは間違っている!」。商談型ショールーム戦略に関することなら、誰にでもこのように大きな声で発言します。それがお客様のためになるならば、ためらうことはありません。
なぜならば、当社にはそれだけの勇気と覚悟があるからです。