第150話 地場の中小企業が大手量販店に打ち勝つ秘訣
大手量販店は「こんな地方の小さな町にも出店するの?」というくらい全国各地に出店します。いわゆるドミナント戦略だったり、カテゴリーキラー戦略だったりで、その地域の需要を独り占めにする作戦です。そうするとその地域の商店街は疲弊し、特徴のない商店は閉店に追い込まれます。
商店街も黙ってみているわけではなく、商店街同士で連携したり、イベントを行ったりして何とか顧客のつなぎ止めに必死です。しかし、価格の安さとワンストップで買い物が済むという利便性には太刀打ちできません。
大都市の郊外にある、人口が増え続けている地方都市においてもその傾向は例外ではなく、駅前商店街はひっそりしていてシャッター街と化しています。
その商店街に隣接する大手スーパーマーケットは、混雑時には駐車場に駐車するのも一苦労するような日もあり、集客力の違いをヒシヒシと感じます。
「先生、実は近くに大手ホームセンターがオープンしました」
「ウチが主に扱っている建設資材も売っています」
「安売りされて顧客を取られると大変なことになります」
相談に訪れた社長の会社は、建設資材の卸・小売りを商売にしています。大きくはありませんがショールームも持っています。これまで地元の工務店やガス・水道工事店、一般ユーザーに建設資材を卸・小売りする商売で信用を築いてきました。
ライバル会社はいるものの、経済発展して人口も増えていることから建設需要は旺盛で、これまでは特別な手を打たなくても商売ができていたということが言えます。
しかし、会社のすぐ近くに大手ホームセンターが進出してきました。当然、建設資材も売っています。それまで何となく商売をやってきましたが、ここへきて危機感が募ります。顧客である工務店やガス・水道工事店、特に一般ユーザーがホームセンターに流れないか心配です。
「社長の会社は、強みは何ですか?」
「ただ単に建設資材を販売しているだけなら、多少は顧客を取られるでしょうね」
「顧客の手の届かないところとか、人手のかかる部分を強化したら打ち勝つことは可能ですよ」
このように話して個別相談を終わりました。
今の世の中「安かろう悪かろう」という製品はありません。よくて当たり前です。したがって、製品で差別化するのは難しい時代です。
もちろん今までに見たことのないような新しい製品が生まれれば、それは製品のみで差別化できるでしょう。しかし多くの新製品というのは、定番の製品に新しい機能を追加したとか、違ったものに見せているとか、そういったものが多いわけです。ということは、全く新しい製品を世の中に発表するのは、かなり難しいということです。
それでは、どこで差別化するかということです。一つのヒントとして、人手のかかるところ、「人」で差別化することを考えるべきです。
先ほども申し上げましたが、製品はよくて当たり前です。そのうえで顧客は、いかに気持ちよく、いかに便利に購入・購買できるかというところにお金を払います。直接的には製品にお金を払っていますが、真には購入・購買までのプロセスにお金を払っているのです。
勘違いしていただきたくないのですが、顧客のわがままを聞いて受注せよと言っているのではありません。顧客は、時には横暴で、わがままで、子供のような存在です。
しかし、その中でも理にかなった要求もあるはずです。その部分を自社のルーチンワークとして処理できれば、逆に強みにすることができます。
そして、そのルーチンワークをどのようにしくみづくるかが重要です。顧客の要望の整理・整頓、ルーチンワークのルール作り、社内支援体制作りなど、課題は山積みです。
一つの案として、ショールームへ誘引して顧客の(不)満足度を測るのは、情報の収集という意味では効果的です。これはショールームの果たす重要な役割です。
モノを見せるだけではなく、情報の集散という機能を持っているショールームを十分に活用して、そのうえで顧客満足度を上げていく戦略です。
社長がここまで気が付いたかどうかは分かりませんが、気が付いていたとしても自社だけでしくみを作るのはかなり困難ですし、それを実践することはさらに困難です。そんな時に、当社はあなたのそばにいます。