第119話 メーカーのショールームを借りてイベントを開催するときに陥る罠
ショールームをお持ちの経営者の方は、何とかうまく活かして売り上げにつなげたいとお考えになっています。しかし、その活かし方がよくわからないため、作ったはいいものの放ったらかしになりがちです。
そういう経営者の方の大きな間違いは、ショールームがなければモノは売れないと勝手に思い込んでいることです。そして、ショールームがあれば顧客はやってきて、売り上げは勝手に上がるという、なんとも都合のいい自分勝手な妄想を持っていることです。
ショールームだけ作っても売り上げにつながらないということは、考えてみれば小学生でもわかりそうなことですが、経営者の方にとってみれば一種の憧れのようなものですので、盲目的になってしまうようです。
ショールームは商談の場所です。したがって、顧客をその商談の場所までどのように誘引するのか、そして、どのように契約までもっていくのかという、営業から契約までの導線をつくらなければ売り上げにはつながりません。
そういう意味では、ショールームは自前で持っていなくてもメーカーなど取引先から「借りる」ことで商談の場を作ることができますし、導線も作ることができます。
しかし、ここで注意が必要です。メーカーのショールームは人を集めることに一生懸命になっています。来館者数が多いことが重要であり、それに比例して売り上げが上がるというデータがあるからです。
事実、こんな事例がありました。
工具販売会社M社が、メーカーのショールームを借りてイベントを開催しました。メーカーの協力がなければ開催できませんので、綿密な打ち合わせを必要としました。
メーカーのショールーム担当責任者は「とにかく人を集めましょう。集客できれば何とかなります。そのためには来場者に厚い恩典が必要です」と言います。これは「集客の罠」です。
我々とすれば、人を集めてどれだけ販売・契約ができるかということが重要です。集客は少なくても販売量・金額が多ければそれでいいのです。ここに、メーカーとの考え方にずれが生じます。
メーカーの言うままに来場恩典や契約恩典を厚くし、お願い営業で人を集めたとしても売り上げにはつながりません。売り上げが上がっているように見えても、それはショールームイベントがなくても上がっていた売り上げです。ということは、そのイベントは無駄金を使っただけの失敗のイベントということになります。
我々は、本物の見込み客を集めることに注力しなければなりません。メーカーの言いなりになって人を多く集めるだけのイベントにしてはいけません。我々にとって大切なのは、集客数ではなく、売り上げと利益の数字です。間違えないようにしたいものです。