第65話 これからの集客方法 一本釣りVS養殖
このコロナ禍において、ショールーム、展示会、イベントの集客方法はずいぶん変わりました。そもそも展示会やイベントは多くが中止に追い込まれています。コロナ以前の集客方法は、大量にチラシをまき、その中から確率は低いものの、興味のある顧客を見つけ出す方法でした。
この場合、チラシにインパクトを与えるために○○製品○○%引きとか、来場記念景品○○とか、ご成約景品○○とか、・・・、安さやお得感満載にしています。少しでも他社と差別化したいということでしょうが、どこの会社も同じことを考えますので逆にインパクトのないチラシになってしまいます。ちなみのこの方法はコロナ以前だけでなくコロナ真っただ中でも行われています。イメージでいえば魚群探知機で魚の群れを探してそこにエサをまき、獲りたい魚を一本釣りすると言えばわかりやすいでしょうか。
しかし今、このような方法では集客が困難になってきています。冒頭でお話ししたように、3密を避けるために展示会やイベントは中止に追い込まれています。展示会やイベントが行われないということは、魚群探知機を持たない漁師と同じで魚は獲れないということです。
そうすると次に考えることは、何とかオンラインでということになります。ところがこのオンライン、以前から何度もこのコラムでお話ししている通り、どうにもリアル感がありません。靴底の上から足の裏をかいているようなもどかしさがあります。まあそれでも映像を目で見られることで一定の理解は得られるのですが、やはり臨場感に欠けます。最も大切な感動を顧客に与えることができません。モノを売る場合、特に耐久消費財など高額な製品の場合は、感動を与えるということは絶対不可欠な要素です。それによって商品に変換できるからです。したがってオンラインもコロナを吹っ飛ばすほどの威力はありません。
それではどうするべきか。1つの解決方法があります。この方法はコロナだからというものではなく、当社が10年以上の年月をかけて習得・開発し、体系化した「ショールーム営業」という方法です。それは大きな市場の中から見込み客を探し出し、ショールームや展示会で製品やサービスの魅力を伝え、リピーター・ファンに育てていくというものです。そしてまた、同時に社員の成長も促すものです。先ほどの例で言いますと、高級魚を大切に養殖し育て上げていくイメージです。養殖には大きな投資と努力が必要ですが、成功すれば安定的な供給と需要が見込まれるというしくみです。
そのショールーム営業で最も大切にしていることは、単に売上・利益をあげるということではなく、ショールーム営業を行うプロセスの中で「人」(顧客や社員)を育て、その結果、売上・利益が増大するということです。そしてそれが最大の目的であり目標でもあります。
これまでに数多くのショールームイベントや展示会を見てきましたが、展示品をどう展示するのか、どうしたら数多く集客できるかばかりを念頭に置いた活動をしてきています。そこには「人」を育てるという最も大切な要素はなく、集客しなければみっともないとか、売り上げをあげたいという結果のみを重要視しています。このやり方では本当に長く強く続けていくことは不可能であり、そうなればショールームはホコリをかぶった物置と化してしまいます。また、展示会は形だけのものとなり、顧客は離れ社員は疲弊し、成り行きの結果となってしまうのです。
先ほどから何度も申し上げていますが、魚を養殖するように「人」(顧客や社員)を育て、その結果売上・利益となるようにしくみづくらなければこのコロナ禍を乗り越えることができません。コロナを耐え忍びやり過ごすことができれば生きられるでしょうが、コロナが長引いて耐えることができなければ市場から退場です。
もうこれまでのように、エサをまいて釣りたい魚を一本釣りするような荒っぽい集客や契約の仕方は時代に合わなくなりました。代わって登場したのは、高級魚を大切に育て、安定的な供給を行うことでリピーターやファンを増やす方法です。しかし未だにショールームを持つ多くの企業が、エサをまき一本釣りするような方法で顧客を獲得しようとしています。今後、他社と差別化を図りたい企業は「人」を育てることをご提案します。こちらは短期的には答えが出ませんが、長期的に見れば必ず成果が出て、しかも長く効果が続きます。
社員を育てると言って研修や勉強会を定期的に行っている企業は多いでしょう。そのこと自体を否定するつもりは全くありませんが、社員を育てる最も有効な方法は他にあります。このことに気が付いた経営者の方は他社に1歩先に出られるでしょう。コロナ終了後はもっと圧倒的な差になって現れるでしょう。
差別化するのは今です。今がチャンスといえます。