第58話 亀の甲VS年の劫
「先生、若いコンサルタントは学校を優秀な成績で卒業してるから理論はすごいんだけど、どうも素直に受け容れられないんだよね」
「亀の甲より年の劫っていうけど、経験に勝るものはないということだと思うね」
これは当社とお付き合いのある、中小製造業の会社を経営する方の言葉です。この経営者の方、積極的にノウハウに投資をしてきた方で、これまでに何人かコンサルタントを使って会社を成長させてきました。したがって、コンサルタントに投資をするたびに会社は成長してきたと言いたいところですが、実はそうでもありません。
コンサルタントの力不足や技術不足が原因なのか、クライアントであるこの経営者に問題があるのか?このあたりについて今回考えてみたいと思います。
この会社では、コンサルタントを使ってノウハウを取り入れ会社を成長させたケースと、ノウハウを取り入れたように見えたもののうまくいかなかったケースがありました。両者にどのような違いがあったのか、この経営者の方に色々話を聞いてみると、1つ明らかに違っている点がありました。コンサルタントの理論?コンテンツ?そうではありません。
実はこの経営者の方、年齢は60歳代で、若い頃に独立起業し苦労をしてここまで会社を大きくしてきました。人生の経験も経営者としての経験も実に豊富です。そこへ大手コンサルティングファームの若手コンサルタントが乗り込んできて、偉そうに(失礼!)あれやこれや指示(コンサルティング)するため「多分正しいと思うのだけれどもどうも素直に受け容れられない」というのです。言っていることは難しいし、理屈っぽいし、自分の頭の良さや持っている知識をひけらかしているように感じるのだそうです。
確かに大手コンサルファームの若手コンサルタントは、優秀な大学を優秀な成績で卒業し、会社に入社して「さあ、やるぞ」と意気込んでいるものと思われます。学校や会社で理論を学んでいるからロジックは得意なのですが、クライアントを説き伏せるようなコンサルティングになってしまい、クライアント側からすれば「言っていることは正しいと思うけれど素直に聞けない」ということになります。
特に、クライアントが50歳代、60歳代の場合、自分の子供や孫のような姿かたちのコンサルタントから「こんなんじゃダメです!もっとこうしなきゃ」なんて言われたら、素直に聞けないどころか逆に反発してしまいます。その結果大金を払ったにもかかわらずノウハウは取り入れられず、投資は失敗だったということになりかねません。
一方、コンサルタントが独自のノウハウを持っていて、年齢がある程度行っている場合、コンサルタントも人生に苦労をしているためクライアントの気持ちが理解でき、言葉の端々にその苦労がにじみ出てくるため人を引き寄せる魅力があります。それは書き言葉では表現できない、会って直接話してみないとわからない感覚的なものです。しかも理論はしっかりしていながら、人生の経験からくる言葉の柔らかさ、表現のやさしさ、言葉を発するタイミング、どれをとっても若いコンサルタントにはマネできないものです。
こうなるとクライアントの心は開かれ、素直に意見を受け容れることができ、結果的にはコンサルティングは成功し会社も成長していくということになります。決してコンサルタントの理論でもなく、コンテンツの良し悪しでもありません。コンサルタントの持つ様々な経験を含めた技術の違いです。
技術というと、例えば話法、プレゼンの仕方、資料の作成の完成度などのように思われるかもしれませんが、そういったものを包括し、その上でその人からにじみ出てくるような魅力であると言えます。ただ単に年を重ね様々な経験をしているというだけで、良いコンサルティングができるかと言えば当然そうではありません。きちんとしたものを持ちながら世の中の甘い酸いを経験し、それをコンサルティングに活かせるかどうかの問題です。
若いコンサルタントがいろいろな経験をしていく中で、クライアントに寄り添えるようなコンサルティングが徐々にできていくことが、コンサルティング業界の発展につながるものと考えます。また、そうなってほしいと願っています。
「亀の甲より年の劫」
世の中には年齢と経験を重ねた魅力満載のダイナミックコンサルタントがいます。会社の発展にはそういったコンサルタントを探し出すことが重要です。あなたに合ったコンサルタントは必ず見つかるはずです。案外近くにいるかもしれません。
あなたが今度使おうとしている、もしくは、今使っているコンサルタントはどんな魅力を持っていますか?