第334話 今の日本、景気がいいの?



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「先生、このところ売り上げ好調なんですよ。先月の決算では過去最高益でした」

「社長、それは良かったですね。でも、手放しでは喜べませんよ」

 ある製造業の会社を経営する社長との会話です。売上好調で、利益も過去最高であれば手放しで喜んでいいと思うかもしれません。しかし、ここに落とし穴があります。

 この会社は小さなショールームを所有していますが、うまく活用できていません。何とか改善したいという思いがあって、当社にコンサルティングを依頼されました。

 ところが売り上げ好調で、利益も過去最高をたたき出したため、社長はコンサルティングに身が入りません。

「ショールームなんか活用しなくても、売り上げも利益も上がってるじゃない」という声が社内から漏れ聞こえてきます。社長自身も、なんとなくそのように感じているようです。

 中には「ショールームなんか邪魔だ。取り壊してしまえ」という過激な考えを持つ役員もいるようで、社長は思い悩んでいます。

 ただし、ショールームを活用できず営業のしくみもできていないのに、なぜ業績好調なのかは、あまりよく分かっていません。「社員が頑張ったからだ」くらいにしか思っていません。

 この会社の業績好調な理由は…「世の中がインフレだから」。

 社長は、ここに気が付いていません。売り上げ好調で利益も過去最高。浮かれているのです。

 日経平均株価が底値を付けた後、金融緩和政策が推進され、徐々に株高が進みました。2014年から2020年ころのことです。このころは、まだデフレ脱却に至っておらず、インフレ目標2%が叫ばれていました。

 コロナ禍が過ぎると円安とインフレが進み、株高が顕著になりました。その結果、ここ数年では庶民の生活は物価高で苦しむようになりました。もはやデフレとは言えない状況です。

 世の中がインフレであれば、モノやサービスの値段が上がりますので、同じものを同じだけ売っていても、自然とその分だけ売り上げが上がります。利益率が同じなら利益額も上がります。

 要するに、企業業績は名目値だということです。名目の企業業績が上がれば、株価も上がります。したがって、経済学的に言えば「円安=インフレ=好調な企業業績=株高」となるに決まっています。ここを忘れて「売り上げ好調」「過去最高益」「ショールーム無用」とはこれ如何に。

 今の日本の景気が本当に良いのかといわれれば、そうではないでしょう。企業業績が好調なのは、インフレ経済のおかげといえます。名目賃金は上がっても、実質賃金はマイナスのままです。したがって、実感なき景気の上振れといえます。

 今後の日本経済がどうなるかは、当社ではわかりません。予想は経済の専門家に任せておきましょう。そのうえで我々経営者がやるべきことは、企業業績に酔うことではなく、どんな時代が来ようとも自社が発展するための次の一手を打つことです。

 前段の会社であれば、見込み客をショールームに呼び込み、自社製品が問題解決にいかに役立つかを理解してもらう。そして、その顧客をリピーターやファンに育てていく。この様なショールーム営業の導線作りや、しくみ作りを、しっかり実行すべきです。

 根底には、ショールームを活用して新規見込み客を獲得したい、売上・利益をもっと上げたい、大企業に依存しない企業でありたい、などと思っているはずです。

 ところが、名目上の売り上げと利益に目がくらみ、次の一手を打つことを忘れるようでは本物の経営者とは言えません。ましてや、コンサルティングに身が入らないようでは論外です。

 経営者の方は、現状に満足することなく、常に次の一手を考えてください。業績が好調な時も、そうでないときも考えてください。そして、景気の波に左右されにくい企業体質を作るべきです。

 大企業やグローバル企業であれば、日本経済、世界経済に左右されることはあるでしょう。しかし、我々中小企業は、社長が次の一手を打つことによって、景気の波を乗り越えて発展していくことはできます。それが社長の仕事です。

 業績が好調な今、あなただったら次の一手をどう打ちますか?

 

 

 


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