第306話 組織はショールーム営業戦略に従う



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「先生、ショールームの改修は、いったん中止にしようと思うんです」

 これは当社のクライアントである、リフォーム業を経営する会社の後継者の言葉です。この会社は非常に儲かっています。少ない人数で大きな売上を上げているのですから、儲かるに決まっています。

 社長が40年前に独立・起業し、強いリーダーシップで社員をぐいぐい引っ張ってきました。そんな社長も、そろそろ息子に経営を任せなければならない時期に差し掛かっています。しかし、まだまだ第一線で活躍できる年齢です。そのための体力も気力もあります。後継者の息子も、数年の内には世代交代が必要と感じてはいるものの、社長が元気なため、やることに遠慮が見えます。

 一般的には、社長のリーダーシップが強ければ強いほど後継者はその影におびえるという、なんとも厄介な問題が発生します。しかし、これは仕方ないことです。後継者に社長と同じことをやれと言っても無理な話です。

 したがってその場合は、さまざまなしくみ作りが求められます。社長とは経営手法を変える必要があるのです。

 そんな社長と後継者の息子の関係ですが、いつまでも息子は社長の陰に隠れていてはいけません。何か一つプロジェクトを任せてもらうとかしなければ、経験を積むこともできませんし、知恵を蓄積することもできません。わざわざ失敗することはありませんが、チャレンジして失敗して…を繰り返して大きくなるのです。

 テレビコマーシャルにあったように、アイデアというものはあるとき突然浮かぶものです。しかしそれは、例えていうなら、手足を血だらけにしながら崖をよじ登り、ようやく登り切った末にポッと浮かんでくるものです。それが電車の中だったり、お風呂に入っている時だったり、トイレに入っている時だったりするわけです。決して、ぼーっとしていて浮かんでくるものではありません。

 そういった意味では、息子はまだまだ経験も苦労も足りません。これからそういった物を積み重ねて、立派な経営者に育っていくのです。

 さて、冒頭の後継者である息子の言葉です。社長が元気だし会社は儲かっているし、仮に失敗したとしても大きな痛手にはならないだろうということで、ショールームの改装の提案をしました。

 社長も以前から「これからの新しいショールームとはどんなものか?」を考えていた方です。今のショールームが全くダメなわけではありませんが、これまでとは違ったショールームを作ってみたいという願望がありましたので、それを息子に具現化してもらおうというわけです。

 相談を重ねていくうちに「いよいよヤル気になってきたな」などと喜んでいたのですが、しばらくして「ショールーム改装よりも、組織の再構築の方が先じゃないかと思うんです」という話になりました。

 確かにそうです。ショールーム改装は「枝葉」であり、組織の再構築は、この会社の事業継承の根幹だと言えます。したがって、根幹がしっかりできていないうちに枝葉をいじっても意味がないのでは?という思いに至ったのはごく自然です。当社でも、ショールーム営業(営業戦略)を支えるチーム・チームワークづくり(組織戦略)が大切であると、さまざまな場面で申し上げています。

 理屈だけ考えればその通りなのですが、そこはやはり、この会社の実情に合わせて提案しなければなりません。それは…

・社長が長年にわたって創り上げてきた組織風土や価値観を、そう簡単に変えられないこと
・組織改革の意味を理解しない人が一定数いた場合、乗り遅れる人がでて退職につながること
・後継者によほど実力がなければ、計画は頓挫する可能性が高いこと
・残念ながら後継者に参謀役がいないこと

 以上の理由から、いきなり組織改革に手を付けるのではなく、先ずはショールームのリニューアルという目的を作り、そこから小さなチームづくりをするほうが現実的であると提案しました。

 ショールームのリニューアルは「営業戦略・戦術」であり、それを実行に移す中でチーム・チームワークづくりを行うという考え方です。その方が社員にとっても分かりやすいですし、知らず知らずのうちに組織やしくみが出来上がっていくというわけです。

「組織は戦略に従う」といいます。要するに、営業戦略に見合った組織を作ることにより営業を下支えし、売上・利益を伸ばそうという考え方です。

「いいモノを作っても売れない」
「営業は頑張っているのに、支える事務方は知らん顔」
「社員全員で営業ができたらなあ」

 こんなことを思っている経営者の方はいませんか? そのような悩みがあるのなら、部門横断型のチームを作り、一つのプロジェクトを任せてみることをお勧めします。この会社の場合は、ショールームのリニューアルというプロジェクトです。

 このプロジェクトを推進することにより、新しいチーム・チームワークができ、組織も変化していきます。組織の変革を願う社長、後継者育成に悩んでいる社長、これから事業承継が始まる社長、ショールーム営業で新しい組織を作ることができます。

 

 


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