第260話 営業力だけを強化しようとした社長の間違い
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「営業力を強化して何がいけないの?」
コンサルティングを始める前に、クライアントの社長から飛び出した言葉です。この社長は小さな言葉を聞き逃しています。
「営業力だけを強化するから儲からないんですよ」と再度申し上げると、社長はわかったような、分からないような顔をしています。
「これから詳しくお話ししますので、よく聞いてくださいね」と申し上げてコンサルティングに入りました。
当社のコンサルティングは、端的に言えば「見込み客開拓から契約までの導線づくり」をご指導をするものです。導線を作るから、流れるように集客、商談、契約が可能になるのです。
その導線というのは、大まかに言えば「売れる準備」「営業活動」「商談」「アフター営業」「リピーター・ファンづくり」という経過をたどります。
売れる準備とは、営業活動に入る前の準備です。強みを洗い出し、提供する価値を決めます。そこからキラーコンテンツを作ったりショールームコンセプトを作ったりします。必要な情報収集の仕方とか、サプライチェーン内での連携とか、社内体制の整備とか、かなり多岐にわたります。
次に営業活動です。クライアントの社長は、ここを強化しようとしました。営業力を強化するには、やはり人材の強化と考えがちです。他の部署から営業部門への配置換えや、新規で採用もしました。営業の研修も定期的に行っています。しかし、思ったほどの成果は上げられていません。
集客は、そこそこできています。ところが契約ができないのです。ショールームでの商談ができていないからです。なぜかと言えば、ショールームはイベントをやって、来館者に一生懸命に製品説明する場所だと考えているからです。加えて「お願い営業」で集客しているからです。
さらにアフター営業がおろそかになっています。ショールームでの商談が上手くできたとしても、その後の営業が重要です。ここは真剣勝負でなければなりません。もう一歩で契約できるからです。
さらにさらにリピーターづくり、ファンを育てる活動もおろそかになっています。この状況では、いくら営業力強化といっても売り上げが上がることはないでしょう。
この会社には必勝パターンがありません。必勝パターンというのは「この形に持ち込んだら、誰が商談しようと必ず契約できる」といった、野球でいう「勝利の方程式」です。
必勝パターンを作り上げるのはなかなか難しいのですが、導線を設計・実行し、それをルーティン化することです。ルーティンが、やがて勝利の方程式に変化していきます。
冒頭の社長は導線を設計せずに、営業だけを強化しようとしました。営業を強化することは重要ですが、そのプロセスが間違っています。営業の人材を増やしたり、研修をしたりすれば強化できると考えたのです。
中小企業は基本的に、大企業と比べて経営資源が不足気味です。特に、お金と人材に不足を感じている経営者の方が多いでしょう。
営業力強化といって人材を採用すれば、その分のコストは上がります。他部門から営業部門へ配置換えすれば、他部門は人材不足になります。これでは会社全体として、うまく行きはずもありません。
このように書き言葉で書いて、それを読むだけなら「そんなの当たり前じゃない⁉」と思うかもしれません。しかしながら、現実的には、導線設計が必要だということに気が付いている経営者の方はほとんどいません。指摘されて青ざめる方が多いのです。
「理屈じゃわかっているのに、実際にはやったことがない、できない」
「業績が悪いのは営業力不足が原因。だから人材を増やす」
「それでも売り上げが上がらなければ、営業部門の責任。ボーナス減らせ」
こういう経営者の方が、一部にいることは事実です。これじゃあ、社員はたまったもんじゃありません。
導線は設計するだけでは意味がありません。いかに実行に移せるかがカギです。ご自分で出来るなら、そんないいことはありません。しかし、そのような経営者の方をこれまでに見たことがありません。