第239話 ひな鳥の羽をむしって飛べなくしているのは、親鳥のあなただ!
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「先生、近々、息子が入社するんですが、どう扱ったらいいかアドバイスお願いします」
こう話すのは、当社のセミナーにお越しになったガス会社の社長です。セミナーの最後に質疑応答の時間がありますが、そこで飛び出したご質問です。ショールーム営業とは無関係ともいえるご質問ですが、ご本人は気にかかっていたのでしょう。
当社はショールーム営業のプロであり、後継社長の育て方を専門としていません。したがって、専門外だからと言ってお答えしないこともできますが、せっかくのご質問です。専門外をお断りしたうえでアドバイスをしました。
そのアドバイスとは「手をかけちゃダメです。放っておいてください」「手をかけるからダメになるんです」というもの。ご意見は様々あるでしょうが、当社はこのような状況をこれまでに間近にいくつも見てきましたので、間違いないと確信をしています。
その一例として、ある会社の会長(父親)と社長(息子)の例をお話しします。会長は、一人息子の社長を溺愛してきました。息子は甘やかされて育ってきたため、大人になっても甘えん坊です。
会社の後継者として入社しましたが、甘えん坊ですから仕事ができるわけでもなく、そのくせ社内では「いずれ社長」の雰囲気を漂わせています。
予定通り社長になってからも、父親である会長がいなければ何も決めることはできません。周りの役員に意見を聞くのはいいにしても、自分で決められないので、必ず会長にお伺いを立てて役員会の多数決で決めます。その方が責任を取らなくてもいいと思っているのでしょう。
周りは社長にチヤホヤします。そうしておけば何事もなく過ぎていくからです。身の安全を確保していたいからです。社長はチヤホヤされていい気になっています。居心地がいいわけです。
そんな社長を、会長は心配をしながら見ています。しかし、少しでも手に負えないとみると、ついつい手を出してしまいます。社長は、常にそれをあてにしています。
このような状況ですから、すでに世代交代をしなければならない時期にもかかわらず、全くできていません。表面上は社長が最高責任者でありながら、実は会長が実権を握っている状態です。
世間にもまれることもなく、社員から認められて社長になったわけでもなく、大事に育てられてエスカレーターに乗ったように昇進し社長になりました。これで本当に世代交代できるのかということです。
「親」という漢字を分解すると「立」「木」「見」になります。これを「親は木の上に立って(子供を)見ている」といいます。そうです、手をかけてはいけないのです。じっと見守って、危険が迫ったなら、そっと教えてやるのが親だということです。
実は、こういった「見守る」ことができない親が多いのです。何かにつけて手を出して、子供をダメにしてしまう親が多いのです。
「良かれと思って手をかけていたことが、実は、ひな鳥の羽をむしって飛べなくしていたのは親鳥の自分でした」
これは当社と親交のある心理カウンセラーの、クライアントの言葉です。そうです、手をかけすぎると子供は飛べなくなってしまいます。羽をむしってしまうことになり、飛び立つことができなくなります。巣立ちできないのです。
この話をしたところ、冒頭のガス会社の社長は大きくうなずいて、納得した表情でセミナー会場を後にしました。
当社はショールーム営業の専門家でありプロであって、事業承継や後継者育成の専門家ではありません。しかし、これまでに多くの中小企業の社長を見てきまし、お付き合いしてきました。その意味では、ショールーム営業の範囲内でそういったアドバイスもしています。
お客様からご質問やご依頼があれば、できる範囲で対応することにしています。ショールーム営業の専門家だから、専門外は知らないとか、興味ないと言ったような「専門家バカ」にならないようにしています。