第236話 ビジネスの肩書きは何を意味するのか、役職か立場か?



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 当社のコンサルティングはパッケージになっていますので、期間と料金が決まっています。一通りの工程が終わると契約終了です。もちろんフォロー契約で延長することも多いのですが、そうでなければ約1年間のお付き合いが終了します。

 コンサルティング終了時には「ご苦労様会」を開催していただくことがあり、今回はそのときに、多少アルコールが入った状態で、最高経営責任者の会長から次のような言葉が飛び出しました。

「社長、もうちょっとしっかりしてくれないと困るよ」

 この言葉に、周りにいた役員は凍り付きました。そして胸のつかえが降りたのでしょう。そんな表情がうかがえます。誰もがそう思っていても、面と向かってはっきり言えなかった中で、ようやく会長が苦言を呈したからです。

 会長は息子である社長に期待することが多く、一人前にするために当社のコンサルティングの責任者に指名しました。会長として父親として、コンサルティング導入で社長に成果を出させてやりたいという親心です。

 ところが当社から見ても、社長がリーダーシップを発揮しているようには見えません。部下に任せきりにしているのです。

 部下の方々はコンサルティングに、まじめに一生懸命取り組んでいただきましたので、ある程度は成果が出ています。しかし会長から見れば物足らない成果であるし、もっと言えば社長のリーダーシップの不足にご機嫌斜めなようです。そのため、アルコールも入って冒頭の言葉となったようです。

 ビジネスの世界にいると必ず肩書きが付きます。名刺の名前の前にくっついているやつです。社長とか専務とか部長とか言うやつですね。ここに代表取締役とか、取締役とかつく場合もあります。最近ではCEOとかCFOとか横文字が付いている場合もあります。この肩書きは何を意味しているのかを考えてみましょう。

 サラリーマンであれば昇進することに仕事をする意義を見つけますので、肩書が非常に重要になります。肩書きが上に行けば行くほど給料も上がり、社内においても対外的にもステータスが高まるからです。

「代表取締役社長」であれば、ほぼ間違いなくその会社の最高責任者に違いありません。加えてオーナー(株主)であれば、鬼に金棒というやつです。その会社では誰も勝てる人はいません。

 ところが、そうかといって責任を持たない人もいます。肩書だけが付いていて責任のない人です。肩書が重くなれば責任も重くなるはずが、肩書だけ重くなる人です。取引先からチヤホヤされますのでいい気になっている人です。

 本来、肩書きというのはその責任の重さを表しています。決して役職とか立場を表しているのではありません。もちろん役職とか立場を表すのに使うことが多いのですが、本来は違います。

 代表取締役の社長であれば、その会社で最も重い経営責任を背負っていることになります。事業が失敗すれば責任を取らなくてはなりません。責任のなすりつけや言い逃れはできないのです。

 この会社の社長は、父親である会長を常に頼りにしています。自分自身で判断や決断ができないのです。見かねた会長が親心を出して、当社のコンサルティングの責任者に指名したにもかかわらず、この体たらくでは会長もがっかりしたでしょう。

 本来であれば、代表取締役社長の肩書を取ってしまえと言いたいところですが、そうはいきません。したがって、会長からは「先生、鍛えなおしてやってください」とお言葉をいただきました。

 代表取締役社長に責任がないようでは、コンサルティングはうまく行きません。対処療法では治せないことは分かっていますので、根本から変えていかねばと感じています。

 あなたの肩書きは何ですか? その肩書に見合った責任を持っていますか? 社員はそこを見ています。

 


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