第228話 「なぜ、そうしたいのか」を理解しない限り、正しい道を示すことはできない
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今回のコラムはショールーム営業とは少し離れますが、最近、深く考えさせられる実話がありましたので、皆さんと考えてみたいと思います。
ある心理カウンセラー兼保護司の方の話です。少し状況説明をします。
十代の女性がいます。この話の主人公です。この女性の方は、お付き合いをしていた男性との間に子供を身ごもりました。妊娠したのです。もちろん結婚はしていません。
彼女はまだ若く、生活力はありません。仕事はしていませんので収入はありません。妊娠したと聞いた途端、相手の男性は彼女の前から姿を消しました。彼女の両親は健在ですが、家庭内暴力で家には帰れません。両親は娘の保護者としての資格はありません。相手の男性の両親も、親として資格のない人たちです。
彼女は人を信用も信頼もできずにいます。また人に頼ることを知りません。家族はいないのと同然です。
彼女の所持金(全財産)は数万円です。したがって生活保護を受けなければ到底生きていけませんし、ましてや子供を産んで育てるなどということは不可能です。
幸いにも冒頭の保護司の方と出会ったことにより、役所で生活保護の手続きをすることも、病院で妊娠の経過を観察することもできています。ひとまずは安定した生活が送れているということです。
さて、ここで皆さんに問いかけます。この女性は、お腹の子供をどうすべきでしょうか? 中絶すべきでしょうか、それとも出産して育てるべきでしょうか? 中絶できる期限は、もうすぐそこまで迫っています。
産むか、中絶するか、二者択一です。
この話を聞いた保護司以外のすべての人は中絶を勧めました。生活保護の担当の人も、医師も、そして私も…です。当然です。生活力はないですし、まだ若いのだからやり直せるからです。それに生まれてくる子供が気の毒だと勝手に考えたからです。だから周りは一生懸命説得しました。しかし、彼女は産む決心をしました。なぜか?
「私は家族が欲しいんです。だから産みます!」
みなさんは、この言葉を聞いてどのように思いますか? この話を聞いた途端、私はハンマーで頭を叩かれたような衝撃を受けました。そして涙がこぼれそうになりました。
彼女は家族を持ちたかったのです。彼女の周りに家族と呼べる人は誰一人いません。自分の両親にも、お腹の子の父親にも愛されずにいます。彼女の家族は自分のお腹の中の子供だけです。
生活保護を受けながら子供を育てるのは大変でしょう。でも、それでも家族、肉親が欲しかったのです。そこには強い意志がありました。
今、彼女の置かれた状況だけで考えれば、お腹の子供は諦めたほうがいいと、ほとんどの人は言うでしょう。そうです、自分は安全な場所にいて、当事者ではないからです。彼女の気持ちとか望みとか、背景とか、そういったことを理解せずに、状況だけで判断しているのです。中絶したほうがいいと。
ところが1人だけ、彼女を理解している人がいました。保護司の方です。保護司だけは彼女の望みや悩みを知っていましたし、意志の強さを感じ取っていました。だから中絶を勧めませんでした。その代わり、できることは精一杯お手伝いしました。
保護司の方は彼女から、信用も信頼もされていました。そして頼られていました。それは彼女の現在の状況だけで判断せず、彼女の気持ちをよく理解したうえでアドバイスしたからです。
翻って考えてみると、普段「お客様の願望、悩み、不安を理解せよ」と言っておきながら、状況だけで判断していた自分に愕然とします。私は心理カウンセラーでも保護司でもありませんが、企業経営者の望みを叶え、悩みを解決するコンサルタントです。企業経営者から信用も信頼もされ、頼られる存在であるべきコンサルタントです。そういう意味では同じ職業と言えます。
今回の話は、身に沁みました。きっと彼女はいい子を産んで、立派に育ててくれるでしょう。家族ができて幸せになれるでしょう。そう願いたいです。