第209話 社員は行動に責任を持ち、社長は結果に責任を持つ
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ある会社にお邪魔した時のことです。簡単な用事でしたので、事務所の隅にあるパーティションで仕切られたスペースに通され、そこでこの会社の社長を待っていました。
案内してくれた受付の方に「少しお待ちください」と告げられ、出されたお茶をいただきながら社長を待っていると、事務所内の壁にこんな貼り紙が貼ってあるのに気が付きました。
「社員は行動に責任を持つ。社長は結果に責任を持つ」
この一文を読んで、ある有名な経営コンサルタントのことを思い出しました。そのコンサルタントは、クライアントの社長を平気で叱り飛ばすような方でした。日本中の多くの中小企業経営者に影響を与えるコンサルタントでしたので、貼り紙から「この会社の社長は、そのコンサルタントの影響を受けているのではないか」と推察しました。
しばらくして社長がやってきました。軽く挨拶して、貼り紙のことを聞いてみると、やはりそのコンサルタントの言葉を引用しているとのこと。
社長曰く「以前の自分は、業績が伸びない責任を社員に押しつけていた」そうです。何とか打開したいと考えているとき、コンサルタントの著書に出会いました。著書を読んでハタと気づき、考え方を変えたということを話してくれます。そこから業績は徐々に良くなり、今では中小企業ながら地域一番店にまで成長しています。
当社は、いろいろな業種のいろいろな企業にお邪魔しますが、このように社長と社員の責任について明確にしている会社は多くありません。勢い社長は、業績が悪いのは社員のせいだと考えがちです。社員が働かないから業績が悪いのだと考えるのです。そしてそれが、昇給やボーナスに影響を与えてしまいます。
考えなければならないことは「本来、責任を持つのは誰か」ということです。社員が社長の指示を守って働いていないのであれば、社員の昇給やボーナスに影響しても仕方ないでしょう。しかし社員が社長の指示を守って働いていて、それで業績が悪いのであれば、それは社長の指示が悪いということになり社長の責任です。
このようなことは至極当然であり、社長なら誰でも理解していなければならない理屈です。しかし、そうでないところに中小企業が、中小のままでいる所以だと考えられます。
仮に「業績が悪いのは社員の責任だ」などと考えている社長であっても、その方が創業者かそれに近い人であれば、社員は何とかついてくることもあります。なぜかというと、創業者としてのカリスマ性があるからです。
ところが二代目、三代目になっても、そのような考え方ですと、会社は徐々にしぼんでいきます。会社を支えてきた創業時の古参社員をはじめ、若い社員も嫌気がさして退職してしまうからです。そのような会社をたくさん見てきました。会社30年説は本当のようです。
仮に、ショールームやモデルハウスに集客できない、契約できないのであれば、それはなぜか? 見込客開拓から契約までの「導線」がないからではないか、ということを疑う必要があります。
もしそうであれば、導線を作らなかった社長に責任があります。導線があれば社員は、今、何をすべきか分かり、行動できるからです。導線があり、社長の指示も的確であれば、行動しなかった責任は社員にあります。その時は堂々と昇給を見送り、ボーナスを減らせばいいのです(言うほど簡単にはいきませんが)。
しかしその責任は、結局は社長が負わなければなりません。なぜなら「社長は結果に責任を持つ」からです。社長はすべての責任者だからです。だから高い報酬をとっているのです。
ショールームを生かすも殺すも社長次第。導線を設計し、社員が行動できる環境を作ることが求められます。当社はそのお手伝いをしています。