第208話「テレビコマーシャルを出したい」と言った社長の勘違い



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「先生、今度、テレビコマーシャルを出したいと思っているんですが、先生はどう思いますか?」

 第一回目のコンサルティングが終わって、最寄りの駅まで送っていただく車内での、当社クライアントの社長の言葉です。

 この会社はハコモノの結構立派なショールームをお持ちでしたが、そのショールームに思うように集客できずにいました。集客できないのですから契約もできません。それで、悩みは深いものがあったそうです。

 たまたまYouTubeを見ていたら、当社のチャンネルを見つけて動画をご視聴になったそうです。そうしたら「ショールームが集客するわけではない」「そこには営業戦略が必要だ」などという内容の動画を見て「なるほど!」ということで当社に連絡をしてきました。そんなご縁でコンサルティングをお受けすることになりました。

 コンサルティングに入る前の、個別相談の時にショールームを見せていただいたのですが、確かにショールームは立派です。中小企業にはもったいないと言っては失礼ですが、そんなショールームをお持ちなのに集客できないのですから「ショールームが集客するわけではない」ということがよくわかったことでしょう。

 ビジネスにショールームは不可欠ながら、ショールームが売り上げや利益を上げるわけではありません。そこには営業戦略が必要です。具体的には、見込客開拓から契約までの導線を作る必要があります。ここをよく理解していただいた上でコンサルティングに入ります。

 コンサルティングでは、まず独自の製品を決定します。独自といえる製品がない場合でも、付帯するサービスに独自性を持たせることで他者と差別化できます。この会社はその典型でした。そして、その製品とサービスを独自のフレーズを使って表現します。そうすると、平凡な特徴のない製品でも独自性のある商品に変換できます。

 ここまで進んだところで、先ほどの社長の言葉です。

「社長、何言ってんですか! まだ商品が決まったところですよ」
「これから商圏やターゲット層も決めなきゃいけないのに、なんでテレビコマーシャルなんですか?」

 社長曰く「いや~、早くお客様にうちの商品を知ってもらいたくて・・・」

 この社長、全くわかってないですね。「ショールームだけでは売り上げにも利益にもなりませんよ」「売れるためには営業戦略が必要ですよ」と、散々お話ししたにもかかわらず、今度は「テレビコマーシャルを出したい」ですって。何を勘違いしているのでしょう。

 端的に言えば、ショールームもテレビコマーシャルも、売るための手段であり戦術です。戦術だけで売り上げが上がるほどビジネスは甘くありません。そこには確固たる戦略が必要です。そう、ショールーム営業戦略です。

 当社のお客様だけではないでしょうが、中小企業の経営者の方は、この戦略を策定するのが苦手なようです。ここが中小企業たるゆえんではないかと考えています。

 立派なショールームを作るのもいいですし、テレビコマーシャルを使って宣伝するのもいいでしょう。しかしそれは、戦略あっての戦術です。

「社長、これからのコンサルティングで、広告のやり方もコンテンツとして出てきますから、そう慌てないで」。そうなだめて、この日は終了。

 戦術と戦略の違いを理解できていないと、こんな会話になってしまします。

 まあそれでも、そこをご指導するのが当社の仕事ですので、この社長が暴走しないようにコンサルティングしなければ・・・、と気を引き締めたことを覚えています。

 ショールーム営業戦略策定には最低1年近くかかります。社運を賭けた戦略です。慌てないで、じっくり行きましょう。そのほうが近道です。

 


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