第164話 自信のない人ほど専門用語を多用する

 近頃、外国為替相場が安定しません。円安に振れていたと思ったら急に円高に振れるなど、何やら怪しい値動きをしています。どうやら政府・日銀がドル売り円買い介入をしているとの観測があります。このまま円安が進むと具合悪いのでしょう。また、アメリカの長期金利の上昇が鈍るとの観測から、急に円高に振れているようです。

 円安なら輸出企業は儲かってしょうがないと思うのですが、どうやらそうは問屋が卸さないようです。製造業は以前の円高時代に海外に工場を作ったため、現地生産化が進んでいます。したがって、過度な円安は業績にそれほどいい効果を及ぼさないどころか、原材料の輸入価格が上昇してしまって、かえって迷惑なのです。

 株式相場は為替相場ほどではありません。ただ、アメリカの長期金利が上昇し株価が下げ気味ですので、アメリカの写真相場である日経平均株価は上値を抑えられ、27000円を挟んで狭い範囲で上下しています。これを景気後退局面と言っている評論家がいますが、実際にはよく分からないし、今後の日本経済がどうなるかを当てられる人はいません。

 アナリストとかストラテジストとかいう人が予想をしていますが、当たったためしがありません。そして彼らは予想が当たらなくても責任を取りません。いかにお気楽な商売かということです。今後の相場は素人ではとても予想はできず、円安円高、株安株高、どちらに動くか見守るのが賢明なのかもしれません。

 当社のお客様は、多くが中小企業経営者の方です。これらの方々は株式投資をやっている方が多いです。結構詳しい方もいますが、プロではありませんので、どこかから仕入れてきた情報を交換し合っています。先日、ある経営者の方からこんな話がありました。

「先生、この間ある証券会社の一般投資家向けレポートを読んでいたんですが、読んでいる人によく分からないように書いているんじゃないかと疑いたくなりますよ」

 この方は長く株式投資をしていますが、もちろんプロではありません。遊んでいる資金を株で運用して楽しんでいる程度です。しかし長い間投資をしていますので、一般的な証券用語は理解できます。

 ところがです。ある証券会社の「ストラテジスト」が書いたレポートを読んでも全く理解できないというのです。文章は理解できるのですが、ところどころにちりばめられたカタカナが理解できないのです。

 例えば、リセッション、ピークアウト、CAPM、リスクフリーレート、リスクプレミアム、オプションなどです。皆さんお分かりですか? この方はこれらの言葉を検索しながらレポートを読み進めました。そしてようやく概要をつかんだというのです。

 しかしなぜ、このような証券用語やファイナンス理論を持ち出して、簡単なことを難しくしてしまうのでしょう? 自分が頭がいい事をひけらかすため? それとも理解されると外れたときに困るから? 多分どちらもでしょうね。

 そして、読んでいるほうも分かったようなふりをして株仲間と情報交換するのです。それでないと馬鹿にされて仲間に入れてもらえないからです。

 物事を他人に教えるときに基本とするのが、「サルでもわかるよに」「タコ社長でもわかるように」と言います。それくらいわかりやすく説明することが大切だということです。何もお客様を「サル」とか「タコ社長」と言っているのではありません。比喩として使っています。

 本当に難しいのは、むずかしいことを分かりやすく簡単に説明することです。ところが、自信のない人は簡単なことを難しくして、理解しにくいようにします。なぜなら、間違ったときに追及されたくないからです。

 自分のコンサルティングに自信のあるコンサルタントなら、経営理論や経済用語を持ち出すことはありません。それではお客様が理解できないことを知っているからです。

 お客様はその道のプロですが、ショールーム営業はこれから学ぶところです。当社は学校の授業のような教え方をしません。難しい理論であっても分かりやすく、そして実践できるようにお伝えしています。それでなければお客様の成功はないことを知っているからです。

 難しく話しをすれば頭で理解することはできないし、ましてや実践することもできません。実践できて初めて理解できたということです。皆さんは部下に難しい話をしていませんか? 

Follow me!