第159話 ハッパを掛けてやらせることを「しくみ」とは言わない
社員が思うように動いてくれないと嘆く経営者の方は多いです。中小企業の中でも特に小企業は、社長が全てにおいてトップです。役員を含めて社長の右に出る者はいません。したがって社長が陣頭指揮を執るものの、社員は能力や経験、知識に劣っていますので、思うように動いてくれないというのが実情です。
「先生、ご相談したいことがあるのですが、うちの会社まで来ていただけないでしょうか」
ある会社の社長から先日、このような依頼がありました。
この社長は、当社のYouTubeチャンネルでセミナーが定期的に開催されているのを知りました。そしてセミナーに大きな期待感を持って受講されました。
その期待に応えられる内容だったのか、しばらくして個別相談のご依頼をいただいたというわけです。その相談というのが、冒頭に述べた経営者の悩みそのものです。
自分が苦労して創業した会社で努力を積み重ね、少しづつ売り上げも社員も増やしてきました。ところが社員が増えるとその分、悩みも増えます。小さな会社であれば自分が何でもやってしまえば済んできたものが、それを分担して社員にやってもらうことになります。
そうすると、どうしても自分と比較して「遅い」「下手」「ぬるい」となります。それはそうでしょう。社長が全てに関してトップなわけですから。しかし、それが許せません。もっとやれるはずだと言って、いつもカリカリしています。ノルマも課して売上の管理をしています。
個別相談では、社長自ら見込み客開拓から契約までのしくみを作ってきたこと、そのしくみを使いこなせない社員にハッパを掛けていること、そして自分に代わってハッパを掛ける人材が欲しいこと、などをお話しいただきました。
しかし、肝心のショールーム営業についての相談は? ということですが・・・、出てきません。そして社長は、このようにお話になりました。
「ウチはショールームのしくみはあるんだよね」
「でも、そのしくみを使いこなせる人材がいないんだよ」
この社長は何か勘違いをされています。この社長だけでなく大半の経営者の方もそうです。
どういうことかというと、ショールーム営業のしくみの特徴は、社員にハッパを掛けたりノルマを課したりせずに、半自動的に売上・利益を上げられることです。そして、そのしくみを導入するのが経営者である社長の役割です。
したがって、社員にハッパを掛けなければならない状況では、会社にしくみがあるとは言えません。それはそうでしょう。しくみがあれば、社長はカリカリせずに経営に専念できるはずです。ノルマなど課さなくても売り上げは上がるはずです。
そうなっていないのですから、社長がつくってきたしくみは、ショールーム営業で言うしくみではないということになります。
「社長、ショールーム営業のしくみとはこのようなものです」
「メリットは、営業も業務もシステマチックになりますので、社長は経営に専念できることです」
ショールーム営業の説明資料を示しながら、このように申し上げました。そうしたところ、しばらく考え込んで
「先生、ちょっと時間をください」
「考え直したいことがありますので」
ということになり、しばらく時間を置くことになりました。
勘違いしてはいけないことがあります。それは「しくみとは、ハッパを掛けてやらせることではなく、半自動的に、流れるように売り上げが上がっていくこと」です。
そう易々とショールーム営業のしくみを導入することはできませんが、諦めなければ必ず導入することは可能です。特別な能力や、むずかしい技術は必要としていません。当社は、これまでに数多くのお客様に導入してきましたが、皆さん諦めずに頑張っていただきました。
この会社の社長にも、そのように申し上げて個別相談を終えました。社長の考えが変わったのなら、コンサルティングを依頼してくるはずです。その時は一生懸命お手伝いしようと思っています。