第146話 中小地場住宅メーカーの将来への不安

 今から10年ほど前、日銀は金融緩和政策を導入しました。量的にも質的にも緩和するということです。これは長らく続いたデフレを退治し、物価の安定を狙ったものです。(量的緩和とは、市中に回るお金の量を増やすこと。質的緩和とは、政府が発行する長期国債を買い入れること、などです)

 具体的には、2%のインフレを安定的に達成しようという政策です。しかし、その目標がなかなか達成できずに、これまで金融緩和を続けてきています。 

 ところがここにきて、アメリカの長期金利の上昇に伴う円安や、戦争によるエネルギー価格の上昇などで悪いインフレがはびこりだしました。これはいよいよ景気後退かと投資家は気をもんでいることでしょう。

 しかし、気をもんでいるのは投資家だけではありません。ある地方都市の、地場住宅メーカーを尋ねたときのことです。C社長は将来への不安を口にしました。

「細井先生、我々のような地場の住宅メーカーは今後、生き残っていけるでしょうか」
「ウッドショック見舞われ、戦争が起きて、インフレになってきています」
「これで金利があがったら、うちのような低価格住宅を作っているメーカーは生き残っていけないような気がするんです」

 確かにこれまでは住宅ローン金利も低かったですし、物価は安定していましたので、低所得者層でもその気になれば何とか低価格住宅なら買えました。

 ところが、住宅資材価格が上がってきてしまい、これまでのような価格では住宅は買えなくなります。加えて金利が上がれば住宅ローン金利も上がることになりますので、Ⅽ社長の将来への不安はもっともです。

 さてどうするか?

 実はもうすでに、低価格住宅から高価格住宅へとシフトしている住宅メーカーがあります。もちろん低価格住宅をすぐにやめるというわけではありませんが、徐々に様子を見ながらアッパー層へと客層を変えようとしているのです。

 この場合、販売の仕方が変わります。これまでのように薄利多売は通用しません。顧客の要望を聞いて、一邸一邸丁寧に作らなければなりません。プロダクトアウトとマーケットインの違いと言ってもいいでしょう。

 Ⅽ社長の会社はこれまで低価格住宅を作ってきました。したがって、これから高価格住宅を作っていきたいというのであれば、そのノウハウを学ばなければなりません。そして作っただけでは売れませんので、それをどのように販売するかを考えなければなりません。

 当社は建築のプロではありませんので、家の作り方をお伝えすることはできません。しかしショールーム営業のプロですので、モデルルームを活用して高価格住宅を販売する方法や考え方をお伝えすることはできます。

 Ⅽ社長は、収益モデルを変更するか否かの決断を迫られています。変更するならば、当社のコンサルティングがお役に立ちます。その時は声をかけてくださいと言って、Ⅽ社長の会社を後にしました。

 日本経済や金利がどのように変化していくか予測はしにくいですが、経営者として、次の一手を打つことを忘れないようにしなければなりません。

 

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