第131話 何度も繰り返すことの本当の効果
大切なことは何度も繰り返すことが重要です。自分の子供の教育でも、部下の育成にしてもそうですが「やって見せて教えて繰り返す」と言います。人を育てるということは、それほど根気がいるということです。
先日、当社のコンサルタント仲間が二冊目の本を出版しました。自分がこれまでにやってきたコンサルティングの実例と、そこから学んだ理論を丁寧に書いている本です。文章は丁寧で読みやすく、これまでにはなかった考え方や見方で書いているため内容的に非常に新鮮でした。
もちろん、自身のクライアント層に向けて発信していますので、その方の専門的な内容となっています。したがって、本来なら分野の違う当社にとっては退屈な本となるはずでしたが、非常に参考になる部分が多かったという印象です。
「細井先生、この間出版した本なんですが、実は、読者から酷評されましてちょっとがっかりしているんです」
「確かにその方が批評している通りなんですが、こちらとすれば意図してそのように書いたんです」
「その読者の方がそのように感じたんですから、まあしょうがないですけど…」
どういうことかというと、このコンサルト先生は大切なことを繰り返し本の中で主張しているため、読者から「同じことを繰り返していて読みにくい」と面と向かって批評されたということです。
この話を聞いて「そういえば自分の本もそういうところがあるかもしれないな」と思って読み返してみると、やはり少しそのような箇所があります。
ただ、このコンサルタント先生が言うように、大切な部分は繰り返し繰り返し書くことが、読者の心に届く近道だと考えています。そうでなければ、さらりとした書きようで済ませることもできます。
しかし、それでコンサルタントとしての価値はあるでしょうか。大切なことは「やって見せて教えて繰り返す」ことが重要です。それでようやく相手に届くのです。簡単なことが継続してできない人が多いのですから、しつこくても繰り返すしかありません。
読み手がどのように受け止めるかの違いですから、それほど気に留めることもないと思うのですが、このコンサルタント先生は気になったようです。
「細井先生、私にとってはきつい批評でしたが、真摯に受け止めます」
「これほどきちんと批評してくれる読者はいませんから」。そう言って気を取り直していました。
このコンサルタント先生は気が付いていないかもしれませんが、繰り返すことの効果はもう一つあります。それは自分の心に刷り込ませるという効果です。
繰り返すことにより、大切なことが相手に伝わるという効果と、自分自身に自信が持てるという効果です。実は、こちらの方が効果が大きいのです。
試しに、困難が目の前に訪れたとき、「できる!」を声を出して3回繰り返してみてください。本当にできるような気になります。
そして、「できる!」「がんばる!」「ありがとう!」を声に出して3回言ってみてください。感謝とともに勇気が湧いて本当にできるようになります。
何度も繰り返すということは、実は、自分自身にとって効果があることなのです。