第75話 ゾンビ企業にならないために

「ここ最近の株価ってどうなってるんですかね」

「日経平均なんか一時3万円を超えて、バブル以降最高値なんですが・・・」

 最近、このように株価について聞かれることが多くなりました。しかし当社は、株の専門家でもアナリストでもありませんので「さあ、金余りか景気回復の期待感の現れじゃないでしょうか」と答えるようにしています。

 実は、日経平均株価というのは曲者で、日経平均は上がっているものの、個別銘柄をよく見るとコロナ以前の株価に戻っていない銘柄が多いのに気が付きます。個別の銘柄は株価が戻っていないのに、なぜ日経平均株価は上がるのか。理由の一つに、日本銀行が日経平均株価指数に連動する、ETFという一種の投資信託を買っていることがあげられます。日銀は今日、日本株の大株主です。それくらい日銀は日経平均株価が下がらないように買い支えているわけです。

 それでは、いつまでこの状態が続くのか。(この状態とは、今の経済のファンダメンタルズと株価が乖離しすぎている状態のことです)これは誰にもわかりません。もうそろそろ危ないと思っている弱気な人。まだまだイケる、33,000円を抜けると強気の人。バブルというのは、弱気な人がいなくなって市場参加者全員が強気になった状態のことを指しますので、そういう意味では今はまだバブルではないということになります。

 ところで、経営者の皆さんの中には株式投資をされている方がいるでしょう。当社のお客様にもいらっしゃいました。デイトレーダーとまではいきませんでしたが、社長室の本棚は株の本でいっぱいです。株の取引に熱中して会社のことは半分以下。そのせいか経営は傾き、ゾンビ企業一歩手前状態です。

「社長、こんな株の本ばかり読んでなくて、閑古鳥が鳴いているショールームを何とかしてください」

「株が上がるか下がるかなんて、当たるも八卦当たらぬも八卦なんですよ」

 このように周りから言われても一向に耳を貸さず、チャートの勉強ばかりしていました。見るに見かねて経営幹部が当社に相談してきたというわけです。以前のようにショールームを活気づけて会社を立て直したい、その思いでした。

 当社がこの会社に伺った時も、お世辞にも儲かっている雰囲気ではありませんでした。なかなか立派なショールームをお持ちでしたが、一目見て、さびれていると感じました。しかし、請け負った以上何とかしなければという想いが強くなり、社長とじっくり話し合いです。

「社長、株もいいですが、ショールームのほうがもっと儲かりますよ」

 色々ありましたが、結局この一言が利きました。どうやら、本業の商売で儲けられないので株に手を出したらしいのです。そしたら抜け出せなくなってズルズルと・・・。もっと儲かると話した途端「どうすればいいの?」

 どんな企業でも世の中の何かしらに役に立っているはずですが、ゾンビ企業は役に立つどころか迷惑をかけていることさえあります。本来なら、とうの昔に市場から退場しているにもかかわらずいまだに生き残っている。アベノミクスの光と影とでも言いますか、極端な金融緩和政策には副作用もあるということです。

 ゾンビ企業と言われないようにするにはどうしたらいいでしょう。最も大切なのはやはり売り上げをあげることです。もちろん売り上げをあげても利益が付いてこない、キャッシュフローが改善されないなど、会計的な問題が生じている場合もありますが、まずは売上です。売り上げがあれば問題点の90%は解決します。事実、中小企業の倒産原因の1位は販売不振です。

 ところでこの会社、息を吹き返しました。もともと技術力が高く、製品は高品質でしたが、それをうまく顧客に伝えられなかったことが販売不振の要因でした。それをショールームを使って改善したのです。経営の安定までは程遠いですが、それでも危機を脱しました。

 どうなることかと思いましたが、やれやれです。しかし安心はできません。現在、社長室の株の本は全部捨ててしまおうかと企んでいます。

 *ゾンビ企業論には様々な意見があります。当社は、そのいずれを肯定も否定もするものではありません。