第27話 人生山あり谷あり 2020/3/31
『「人生山あり谷あり」そうじゃないですか、細井さん。まあ落ち着くまで我慢しましょうよ』そう言って自身で納得させていたのはあるクライアントの社長です。この会社、今どきの世の中の会社と同様に、新型コロナウィルス感染拡大の影響で売り上げが急激に低下したのですが、売っている商品といいその売り方といい昔ながらの商売で、今更変革を起こせるわけでもありません。しくみを変えると言っても何をどう変えればいいのか、もし失敗でもしたら・・・、なんて考えが先に来てしまうため、古い体質のまま何十年と変化せずに今日まで来てしまいました。ただ、その長い歴史の中で信用と資本を積み上げてきたため、今回のような経済の停滞に遭遇してもびくともせず、「まあ、のんびり行きましょう」などと軽口が出てくるのです。
大きな経済のうねりには、コンドラチェフの波とかジュグラーの波といった、ある一定期間に起こる変化が知られていますが、この会社はそんな波を乗り切って生きてきました。世の中の環境の変化に対応していくことが生き残っていく手段ではありますが、変化しない(進化しない)ことを選択することで生き残る会社もあります。
こういった会社は、企業規模拡大とか売り上げ増大とか言った拡大志向ではなく、長く歴史を紡いでいく、会社を自分たちの代で終わらせないということに力点が置かれているように思います。
コンサルタントから見ればこういった会社は困りますよね。クライアントにはなりにくいですもんね。しかし変化しないと言っても全くしないわけではなく、やはりその時代に合った経営の仕方を模索しています。お金をどう残していくか、世代をどうつないでいくかということは常に考えています。そういった分野でコンサルタントを活用できることもあるのではないでしょうか。
高い山に登れば見晴らしはいいし、下界でうごめく人々を見下ろして優越感に浸ることはできますが、いったん嵐になれば身を隠す場所もなく、風当たりが強く吹き飛ばされてしまうかもしれません。一方、谷におりてくれば日当たりが悪く日がすぐに沈んでしまうかもしれませんが、厚い人情と気持ちのいい温泉もあります。人生その時々に一生懸命努力して生きていくことが大切であって、嵐の時は無理をせず谷におりて温泉につかりながら次の一手を考えるというのはどうでしょう。のんきなことを言っている場合ではないと叱られるかもしれませんが、案外いいアイデアが生まれるかもしれませんよ。