第114話 大規模展示会の隅でも来場客を呼び込む接客法
最近はコロナが落ち着いて、展示会も少しは開催されるようになりました。以前から準備していて、緊急事態宣言が解除されたことを機に開催にこぎつけたものです。したがって、まだまだ以前のように盛況とまではいきません。
先日、ある大規模展示場で開催された住宅関係、食品関係、科学製品関係の展示会は、平日にもかかわらずまずまずの入りでした。しかし、そもそも展示会の数が少なく、広い展示場内は寂しい感じもありました。
そんな中、旧知の社長と一緒に食品関係の展示会を視察した時のことです。
「細井先生、会場の端っこに行ってみてください。あれじゃあ物は売れませんよ。もうちょっと真剣にやったらどうなんでしょうね」
大規模合同展示会の視察に誘われてお供したときの出来事です。この社長、食品を卸売りする会社の社長です。展示会の中央部は、名の知れた食品メーカーが大きな小間を取って展示をしていました。実演やら試食・試飲も行っています。試作品の機械があったり、なるほどと思わせるような展示品がありますのでかなりの人だかりです。
ところが、会場の隅の方へ行ってみると、ひっそりとしている小間があります。特徴ある製品を展示しているはずなのですが、来場者は寄ってきません。パーティションに仕切られた壁沿いの小間ですので、立地とするといいわけがありません。しかし、来場者が寄ってこなければ自社の製品PRになりません。
寄ってこなければ来ないで、何か対策を立てたらどうかと思うのですが、それもなし。ただ椅子に座って待っていたり、小間の前を通りがかった来場者に声をかける程度で、真剣味が足りません。
「社長、あれじゃあダメですね。製品はいいかもしれませんが、知ってもらう努力をしなくちゃ。もったいないですね」
こんな話をしながら、試食・試飲をして情報を集めました。中には非常に丁寧な接客で展示品の味も「う~ん、これはいけるかも」といったものもありました。今後、仕入れをするか検討です。
この社長は、会場の隅々までくまなく見て回り、自社にいい製品はないか探したのですが、やはりどうしても会場の中央部で熱心に声をかけているメーカーによって行ってしまうとのことです。
その中央部で、ある食品メーカーに声をかけられました。トレイの上に載せた試食品を「どうぞ試食してみてください」と差し出されました。「お、なかなか行けるな」と思った社長は原材料や製法について尋ねてみると、「こちらではなんですから弊社のブースでお話ししましょう」ということで少し離れた会場の隅に連れていかれたそうです。
そのブースには、その会社の社員と思われるスタッフが数人、接客に忙しそうでした。どうやらその来場者も声をかけられてそのブースまで連れてこられたようです。そして、次から次へと、どこからともなく来場客とスタッフが一緒になってやってきます。
そして、熱心に製品PRをしています。来場客もそれを一生懸命聞いています。名刺交換をして、パンフレットを渡し、次回の展示会の案内までしています。これはこれで努力をして集客しているように見えますが、残念ながら、ここには一つポイントが足りません。なんだと思いますか?・・・
全ての来場客は業種が書かれたホルダーを首から下げています。そのホルダーに書かれている業種を目当てに、自社の見込み客を探せていないということです。この場合、食品の小売・卸売業者を探せば、雑多な来場客の中から効率よくPRできるというものです。自社の見込み客をホルダーの表示で探し、一本釣り法で自社のブースまで連れてくることで立地の悪条件を克服することができます。
ところがこの会社は、会場にいる人にのべつ幕なし声をかけて自社のブースに誘引しています。その中に見込み客がいればPR成功と言えますが、そうでない来場客もいますので、その来場客を誘引しても意味がないわけです。まあ、何もせず椅子に座って待っているだけよりは、はるかに仕事をしていると言えますが。
製品自体はいいものの、集客や接客がうまくいかずにPRの機会を逃している出展者が多くあります。今時「これはすごい」とか、「こんなの見たことない」とか、「世界初」とか、そういった製品はめったにあるものではありません。展示会でPRして売上を上げていくためには、普通においしい食品を見込み客に丁寧にPRして、気持ちよく取引できる環境をいかにつくるかにかかります。
いい製品をお持ちなのに「売れない」「儲からない」と嘆く前に、なぜ売れないのかを考える必要があります。「ショールーム営業」はどんな会社でも、今の人員と設備でも必ずできる方法をご提供し、クライアントの皆さんと一緒に考えていくコンサルティングです。
特別な能力や技術は必要ありません。「普通の会社」ならどんな会社でも取り組むことができるのが特徴です。