第72話 顧客を奪われたのは大手同業他社のせい?

 ここ最近の巣ごもりで、住宅リフォームの需要が旺盛です。外出しなくなった分、自宅の痛んだ部分が気になったり資金の行き場がなくなって「リフォームでもしようか」という方も多いです。従来の需要の受け皿であったリフォーム専門会社、工務店、水道工事店の他に、電気量販店、燃料会社など、様々な業種が参入しており、まさに戦国時代を迎えています。

 ある地方都市の、老舗のリフォーム店から依頼を受けて会社に伺った時のことです。近くに大手リフォーム専門店が進出して、一気に需要を奪われたということでした。

「先生、何とかしてください。これだけ頑張っているのに売り上げがどんどん落ちています」

「このままでは会社は倒産、一家離散です」

 悲痛な叫びです。

 経営者の方は、大手競合店が近くに進出したことが売り上げ減少の原因だと考えています。そして、これを何とか取り戻して、元のように地元に貢献したいので何とかしてほしいという相談です。

「社長、顧客を取り戻すにはどうしたらいいと思いますか?」

「そりゃあ先生、とにかく客のいうことを聞いて、安くても受注することだよ」

 これだからダメなんだとこの時点で分かりました。実際、無理に売り上げを作ろうとして安い物件に手を出し、忙しくなりすぎて返って工事品質を落としてしまい、顧客の離反を招いたこともありました。

 まず、事務所に伺って気が付いたことは、ショールームが「暗い」「汚い」「きつい(空間に余裕がない)」の3Kでした。「暗い」のは、来客がほとんどないので照明を落としているため。「汚い」のは手入れをしていないのでホコリがかぶったままになっているため。「きつい」のは、商品とは無関係なものが置いてあり、足の踏み場がないため。これではショールームの機能を果たしていません。

 しかし最大の問題点は、経営者の表情が「暗い」ことです。また、そのため従業員も「暗い」ことです。ショールームの3Kなら手を入れればすぐに改善できますが、経営者と社員の「暗い」のは時間と手間がかかります。従業員の暗さは経営者の暗さからきていますので、まず、経営者を処方せねばなりません。経営者の方はここに気付いていません。

 地域の老舗ですので、顧客を取り戻す方法さえ仕組み化できれば自然と客足は戻り、地元にはなくてはならないリフォーム店に復活できるはずです。その後、本格的なコンサルティングに入りました。

 いらないものを捨て、掃除をする。危険な個所はないか点検する。清潔なユニフォームを着て、笑顔で挨拶をする。社内ルールを決め、全員守る。社長と言えど例外なし。要は、全てをお客様基準で考えて行動しました。また、ショールームを徹底的に磨き、ショールームに誇りを持つようにしました。

 そして、最も大切な経営者の表情です。コンサルティングを進めるうちにやるべきことが明確になり、次第に暗かった表情が明るくなっていきました。そうなれば社員も変わります。社員の表情も明るくなり、事態は好転しだします。数か月後、経営者、社員とも表情は以前と比べると断然明るく、ショールームの3Kも改善され、売り上げも元の水準にかなり戻ってきました。

「貧すれば鈍す」

 一つ歯車が狂うと何もかも悪いほうへ転んでしまい、坂道を転げ落ちるように会社がダメになってしまう。よくある話です。しかし「逆もまた然り」です。

 あなたの顧客を虎視眈々と狙っている同業他社はいくらでもいます。あなたはショールームという武器を持っているのですから、磨いて誇りを持てば、敵はなかなか攻めてこられないでしょう。

「先生、本当にありがとうございます。これからもお願いします」

もうしばらく様子を見ることになりました。

 

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