第169話 無能な幹部社員の戦略を無効化するコンサルティング
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無能な幹部社員というのはどこにでもいるようです。特に、オーナー経営者に従順で可愛がられるタイプの人は、仕事を遂行する能力に欠けていても幹部社員(取締役)の一人として君臨します。オーナーには従順な反面、部下には自分を大きく見せようとするのがこのタイプの特徴です。また、オーナーのいないところで悪口を散々言うのもこのタイプの人です。
このような幹部社員に、オーナーはどこまで権限を与えているのでしょう。たいていは営業・業務的な管理を任せているだけで、資本の部分は触らせないのが普通です。したがって、幹部社員でありながら「班長」程度にしか権限を与えられていません。
それでも対外的には幹部ですから取引先はすり寄ってきます。それが度を過ぎると何か勘違いが起きて、接待漬けで身を危うくすることになります。
ある会社の若いオーナー経営者が、自身の経験不足により難題を抱えていました。ショールーム営業コンサルティングでお邪魔していた会社ですが、それとは別な問題を抱えていました。
それは若いオーナー経営者が、取り巻きの幹部にいいように担がれて裸の王様になっていたことです。心ある一部の取締役からは注意をするように助言をされていましたが、取り巻きの幹部からは耳障りの良い話しかされないため、いい気になっていたのが原因です。
取り巻きの幹部は、取引先からのゴルフと酒の接待で大忙し。夕方には事務所にはいません。オーナー経営者を担ぎ上げておいて自分はやりたい放題。これでは会社はうまく行くはずもありません。一般社員の心はどんどん離れていきます。
「先生、ショールーム営業のコンサルティングは終わりましたが、引き続きご指導願いたいのですが・・・」。 先代のオーナー社長で、今は会長職になっている方からこのようなご依頼をいただきました。
聞くと、自分の息子に社長の座を譲ったのはいいが、取り巻きの幹部に使われてしまって、社長自身の経営ができていないというのです。
何か社内で問題が起きても、取り巻きの幹部に「様子を見よう」の一言で問題の先送りをされる始末。今は小さな火種でも、早く解決しなければ今後どれだけ大きくなるか分からないにもかかわらず!
こうなってしまうと社員との距離はどんどん大きくなり、やがて溝ができてしまいます。小さく浅い溝であれば埋めることも可能ですが、この会社の場合、グランドキャニオンの如く大きく深い溝ができていました。
表面的にはうまくやっているつもりでも、いたるところでほころびが出てきてしまいます。自分では決めることができないため、取り巻きの幹部に相談します。すると先ほどのように、「もう少し様子を見ましょう」となって、緊急の案件でもなかなか前に進みません。
「先生は確か、ショールーム営業のほかにコンサルティングプログラムを持っていましたよね」
「チームづくりをするコンサルティングだったと思いますが、それをお願いできませんか」
これ以上、社員との溝を深くすることはあってはならないとの思いで、当社にコンサルティングの依頼をされました。
当社としては、ショールーム営業コンサルティングの最中よりうすうす感づいていましたので、何となく予感はありました。今回の課題は、若い社長から取り巻きの幹部社員をどのようにはがすかという難題です。一長一短にはいきませんが、時間的な余裕もありません。こちらも覚悟が必要です。
それに、ショールーム営業コンサルティングでお世話になった会社です。ある程度は経営者の方々とも気心は知れています。難しいコンサルティングになるのは分かっていますが、期待されていますので断るわけにはいきません。お引き受けすることにしました。
無能な幹部社員は、自分の身の安全のみを考えて行動します。問題が自分に降りかかるのであれば、それを先延ばしにし、そうでなければ部下に指示をするだけです。これが無能な幹部社員の取る戦略です。
この会社の場合、会社がチームになっていません。そしてチームワークも発揮できていません。「チームの弊害」というものはあるにせよ、全くチームになっていないのはそれ以上に問題があります。
まずは、経営者も社員も全員に「中小企業向けコーポレートガバナンス」を理解してもらうことから始めます。社員と経営者の距離を縮め、深くなってしまった溝を少しずつ埋めていく戦略です。そして無能な幹部社員には、権限と責任を持ってもらいます。この2つをセットで持たせることにより、無能な幹部社員の戦略を無効化する戦略です。
オーナー経営者のご機嫌を取って、会社を食い物にするような幹部社員には考えを改めてもらいます。そして経営者も社員も全員でショールームを活用できるようにします。今回はそのための組織づくりです。
あなたの会社には、このような無能な幹部社員がはびこっていませんか?