第134話 組下の工務店がハコモノのショールームを作っても成功しない理由
組下の工務店と言えば元請けの建設会社から仕事をもらっている、いわゆる「下請け」です。元請けから指示を受けて工事をする会社もしくは職方を指します。下請けと聞くと少しイメージはよくないですが、何のなんの、技術力も現場管理能力も優れた企業はたくさんあります。
組下ですから、元請け会社から仕事を発注してもらいます。したがって営業は元請けに対して行います。この場合、完全なB2Bビジネスです。そして営業方法は特殊です。建設業界特有の営業方法があります。もしくは、営業をしない会社もあります。
そのような会社がハコモノのショールームを作ると言い出しました。ショールームを作って少しでも売り上げを上げようという戦略です。展示品は、建材や水回り製品などです。組下とはいえ工務店ですから、その辺は得意です。
この話を聞いたとき、「やめときゃいいのに」とつぶやいたことを思い出します。他人の商売に口を出すほど自信家ではありませんが、どう考えても成功するとは思えないため、このようなつぶやきが口から出ました。
それでは、なぜそのようなつぶやきが口をついて出たかということです。その時は反射的でしたので考えたわけではありません。拒否反応が出たと言ってもいいでしょう。
要するに、本業の下請け業務がまあまあ順調で、その営業しかしたことのない工務店が、B2Cビジネスの一般消費者相手の営業なんてできるわけがないということです。
まさか、ショールームを作れば勝手にお客様が来てくれるだろうと考えたのでしょうか?来てくれたとしても、どうやって製品説明やクロージングをするのでしょう?
そんな甘い考えでショールームを作ったとしても、結果は目に見えています。もし、ショールームをオープンさせるためにアドバイザーを雇ったなどということであれば、商売を知りなさすぎます。
この会社はアドバイザー(店番)を常駐させましたが、身内だったため、まだ「マシ」だったと言えます。しかし逆に、素人にアドバイザーが務まるわけがありません。
ショールームアドバイザーをなめてはいけません。彼ら、彼女らはそれ相応の教育を受けています。高いアドバイス能力がなければアドバイザーとして機能しません。
ショールームを本当に回せている会社はショールームがなければ商売にならない会社であり、ショールームに社運を賭けているのです。だからショールームが回っているのです。
一方、ショールームを趣味的にオープンさせて、何か買ってもらって売り上げが上がればいいなんて考えでは成功するはずもありません。ショールームは雑貨屋さんではないのです。
このような組下の工務店が、ショールームを作ってはいけないと言っているわけではありません。社運を賭けたショールームになっているかどうかが問われているのです。
本当にショールームで儲けたいなら、自社に最適な形態のショールームを作ることと、ショールームにお客様を誘引する導線を作ることです。「儲かるしくみ」を作ると言ってもいいでしょう。
間違えないでください。ショールームを作っただけではお客様は来てくれませんし、売り上げも利益も上がりません。社運を賭けるくらいの勢いでなければ、成功は遠い夢です。
ちなみにこのショールームは、1年持つか持たないかのうちに閉鎖になりました。