第122話 「いいモノを作っても売れない 」を打破するいい方法
「社長、こんなにきれいにできました!」ある鉄工所の社員H君の自慢気な言葉です。
これに対して社長はこう言います。「おー、それはすごいね。ところで、その部品のコスト計算はどうなっているのかね?」
「ハイ、ちゃんと計算しています。原価が○○円なので、××円で販売できればかなりの利益が見込めます。それくらいの価値はあるはずです」
よく聞く話です。モノづくりの技術屋さんは作ることに一生懸命で、作った後のことを考えていません。いいモノを作ることが彼らの仕事だからです。
「しかし、その価格で買ってくれる顧客がいるかだよな。H君どう思う?」。社長はコストをかけて試作した部品の販売方法に悩んでいます。
「うまくPRすれば売れると思います。販売は営業にお任せしますが・・・」
確かに製造責任者のH君にとってみれば、販売にまで口を出すことは気が引けます。いいモノを作ることが自分の役目だと考えているからです。かといって、コストをかけすぎて販売価格が上がってしまっては売れるものも売れません。そこを社長は心配しています。
「H君は技術力はすごいんだけど、販売のことを考えないからなあ」と、ここが社長の悩みです。
この鉄工所は中小企業にありがちな「技術力は高いが、販売(市場)は大企業に依存している」状態です。
受注先企業の下請けをしていて、仕事は順調に受注できているのですが、受注先の顔色を窺い、自分の好きなようにビジネスができていないことに不満があります。そこで、自分で価格を決められる企業になりたいとのことで、自社でオリジナル製品を作って販売することを決意しました。
しかし、これまで下請け仕事をこなしてきただけの企業にとって、自社ルートを開拓して販売することの難しさを嫌というほど感じてきました。今のまま下請けで生きていこうか、それとも自分でビジネスを回していけるようにしようか、ここまで来て迷いが生じています。
「社長、私、営業を兼務します。自分で作ったんだから、その良さは自分が一番知っています」
製造と営業を兼務するのは大変なのは分かっていますが、H君にしてみれば、自分の自信作を他人にとやかく言われたくないという自負があったようです。
こうなれば「ショールーム営業」の出番です。製造業ですから「ハコ」「モノ」のショールームがいいのは分かっていますが、そこは慎重に検討します。まずは展示会で反応を見ることにしました。
展示会と言っても、展示会をやって製品をただPRするということではなく、そこに至るまでの導線と仕掛けを作ります。展示会は、その導線や仕掛けが機能していたか、また、間違いはなかったかを検証する場でもあります。
展示会で製品PRすることは間違いではありませんが、本来は商談する場です。そして、勝負はその前の段階で決着しているということです。ここを忘れているために、展示会で結果が出ないと悩む経営者の方が多いのです。
あなたは展示会を商談の場にしていますか?商談に至るまでの導線と仕掛けをつくれていますか?