第111話 他人任せでは、本物の見込み客は探せない

 世の中には「ゴーストライター」と言われる人がいます。著者本人に代わって文章を書く人のことを言います。その存在は知っていましたが、日本に何人くらいいるかとか、どれくらいの割合で書いているかは全く知りませんでした。

 先日、ある図書館でゴーストライターの内幕を書いた本を見つけました。その本によると、ビジネス書の9割はゴーストライターだそうです。「え~!そんなに?」と思ったのですが、よく考えてみれば、大企業の経営者やスポーツ選手、芸能人、コンサルタントなどは、本当に商業出版に堪えうる日本語の文章が書けるのかという疑問がわいてきます。

 文章くらい書けるかもしれませんが、読み手にすんなり伝わる文章でなければなりません。専門用語がずらりと並んでいたり、難解な文章や幼稚な文章では、読み手のことを考えて書いたとはとても言えません。読んでもらって初めて価値が出るのであって、自己満足の世界ではないのです。したがって、上記のような職業の方が著者になる場合、ゴーストライターが必要だということのようです。

「細井先生、最近、お忙しいようで結構なことですね。新しいクライアントとご契約されたんですか?」

「いや社長、そうではなくて、今、本を書いているんですよ。原稿を書くのと校正に時間を取られまして大変です」

 これは、以前からお付き合いのあるM社の社長との会話です。近々、本を出版予定で、原稿書きとその校正でかなり消耗していましたので忙しそうに見えたようです。

「へ~、本を書いているんですか。そりゃあ凄いですね」「それで、どんな本ですか?やっぱりショールーム関係の本ですか」「でも、そんなに忙しいなら、ゴーストライターという手がありますよ。ご存じでしょ?良ければ紹介しますよ」

 この社長、ちょっと出版関係には詳しいらしく、忙しそうにしている姿を見て親切心でアドバイスをしてくれたようです。

「社長、ありがとうございます。でも、自分で書かないと意味がないと思っていますので、もう少し頑張ります」そう言って、丁重にお断りしました。

 決して、ゴーストライターを使って本を出すことがいけないと言っているわけではありません。しかし、出来上がった本が、本当に著者の言いたいことを表しているのかが問題です。もし「売れさえすればいい」ということであれば、読む価値はありません。

 実は、大規模展示会でも本質的に同じような事例があります。中小企業の場合、業界団体や組合、仕入れ先の合同展示会に出展することがよくあります。それはそれでいいのですが、問題は、集客を自社でするわけでもなく主催者任せなため、本当の自社の顧客がどこにいるのか分からないということです。

 会社が永続的に発展していくためには、新しい製品の開発と新規顧客開拓が不可欠です。何も、製造業だけに限った話ではありません。卸売業も小売業もサービス業も同じです。

 そんな中、既存客に既存の製品だけを販売していては、将来、尻すぼみです。そうであるにもかかわらず、合同展示会に出展して満足しているようでは、ゴーストライターに本を書いてもらっているのと同じです。

 ゴーストライターや合同展示会がいけないのではなく、本当に言いたいことを書けていない、本物の見込み客を見つけられていないことが問題なのです。

 苦労をして書いた文章であれば、将来、必ず血や肉になり役に立つ時が来ます。同じように、苦労して自社の本物の見込み客を見つけられれば、将来、必ず売上・利益になります。

 他人に本を書いてもらって、それが売れても自分のためにはなりません。他人に集客してもらっていては、それが自社の売上・利益にはなりません。

 さて、あなたはどちらを選びますか?