第109話 社長、御社の実力は本物の見込み客の集客数で分かります
一般的に、行動を起こすにはベストシーズンというものがあります。例えば、皆さんは旅行に行くとき、いつ行きますか?多くの人は季節のいい行楽シーズン、すなわち4~5月や9~10月に行きます。暑くもなく、寒くもなく、軽装で動きやすい季節だからです。そして行楽地には、お目当てだった素晴らしい風景が目の前に広がります。満開の桜、萌えるような新緑、輝くような紅葉・・・。
さぞ楽しいだろうと思いきや、行楽地は人でごった返していて、ゆっくり観光できません。旅行代金は高いし、高速道路は渋滞だし、新幹線は満員。「あ~、疲れた」ということになりかねません。小さな子供を連れていたり、お年寄りと一緒では素早く行動もできず、「こんなことなら家にいたほうがよかった」とつぶやくのがオチです。
「細井先生、ちょっと教えてください。ライバル会社が来年の、○月×日に展示会をやることが分かったんですが、うちはいつやったらいいでしょう?」「ライバル会社に負けたくないから、この近くの日程でやりたいと思うのですが・・・」
コロナが落ち着いて、緊急事態宣言が解除された直後にE社の社長が相談にお越しになりました。ワクチン接種が進んで、来年の春には展示会が再開できると踏んで計画を立てるためです。
「社長、ライバル会社は展示会シーズンにやるんですね。それでしたら、やらせておけばいいですよ」「どうせ人集めのための展示会ですから、成果なんて出ませんよ」
E社はこれまで、業界の合同展示会に出展していたものの、自主開催したことがありませんでした。合同展示会では成果が出ないため自主開催を思いついたのですが、効果的なやり方が分かりません。そこで、当社にご相談にお越しになったというわけです。
「え~、平日にやるんですか?それじゃあ集客できませんよ!」
「社長、集客できなければ、できないでしょうがないじゃないですか。それが、今の、御社の実力です」
社長の顔色が、見る見るうちに青ざめていくのが分かりました。「そんなの困る」とでも言いたげです。しかし、丁寧にご説明した結果、当社の意図を理解されたようで「分かりました。やってみましょう」ということになりました。
当社とはコンサルティング契約を結んでいませんが、ひとまずE社だけでどこまでやれるか試してみようということで、展示会を自主開催することになりました。日程について当社の提案は、展示会シーズンを外した平日です。この理由は、E社の営業力がまともに集客数に現れるため、その実力を測ることができるからです。集客の対象は、購買権を持った人(例えば、社長とか購買部長など)のみです。そして、飲み食い・景品・アトラクションの類は一切ご法度です。
ショールームイベントや展示会は、ベストシーズンというものがあって、それは冒頭でお話しした行楽シーズンと同じ4~5月と9~10月です。ベストシーズンは主催者も、出展者も、顧客も大忙しです。みんなこの時期に、一斉にイベントを開催するからです。しかも、週末に集中します。すなわち、動きやすく集客しやすい時期を選んでいるのです。
こんなわけで主催者は、顧客の取り合いをします。イベントに人がいないのは困りますから、極端な話「誰でもいいから連れてこい」ということになって、飲み食い・景品・アトラクションの提供となります。それがなければ来てくれないからです。準備も後片付けも、社員は大変な苦労を強いられます。その割には全く成果の出ない展示会で、「あ~、疲れた」となります。そして「こんな展示会はやらないほうがいい」ということになります。
E社の社長には、自社の実力を知ってもらって、当社のコンサルティングが必要か必要でないか判断してもらうことにしています。展示会などのイベントに、本物の見込み客をどれだけ集客できるかで、御社の実力が分かります。