第107話 社長、あなたがやりたいのは、どんな展示会?

 コロナ感染が広まって約2年。そのうち収まるだろうと高をくくっていた人は数知れず。株式相場で財を成した人が昨年の春、「夏には収束して株価は上がるだろうから、今のうちに仕込んでおいたほうがいい」などと経済雑誌のオンライン記事に書き込み、見事、予想が外れて姿を消しました。

 各種イベントは中止に追い込まれ、スポーツは無観客開催という状況、展示会も大小問わずことごとく中止されました。主催者も出展者もやきもきしていることでしょう。緊急事態宣言は解除されましたが、急に開催ということにはならず、来年の春まで待つ必要がありそうです。

 ところでその展示会ですが、これまでは大規模会場に多くの人を集めて、お祭り騒ぎのようなやり方をしていました。大企業や業界団体が主催して各企業が出展するというスタイルで「大きいことはいいことだ」的なスタイルでした。ところが「密は敵だ」という行政のリーダーもいて、今後は、大規模展示会は敬遠される可能性もあります。中小企業の場合、この大規模展示会に出展することで自社製品のPRをしていたという経営者の方は多くいて、展示会自体が開催できないということは、結構、死活問題です。

 自動車関連部品を製造するJ社も、そんな中小企業の一つです。自社製品のPRを業界団体の展示会に依存していたため、展示会自体がなくなって困っていました。ただ、展示会に出展していて、それで売り上げが上がっていたかと言えばそういうわけではありません。特に自社で集客するわけでもなく、業界団体の広報任せだったからです。

「細井先生、展示会がなくなって製品PRする機会が極端に減りました。受注先からの仕事はあるにはありますが、自社オリジナル製品をPRできなくてちょっと残念です」「展示会に出展できるのはもう少し先になりそうなので、自社だけで展示会をやろうと思うのですが、やり方がわからなくて・・・」

 何とか展示会を自主開催しようと考えているのですが、その効果的なノウハウがなくて当社にご相談にお越しになったというわけです。

「社長、一つお聞きしますが、どんな展示会を目指していますか?」「例えば、これまでのように、人を大勢集めてにぎやかにやりたいですか?それとも、ちゃんと成果が見える形がいいですか?」

 この質問に社長は「先生、これまでのやり方に私は疑問を持っていました」「これからは、もっとこじんまりしてもいいので、売り上げがあがる展示会にしたいです」「そうでなければ先生に相談しません」と、こう来ました。納得せざるを得ません。質問する方が間違っていました。

 この社長、どうやらこれまで業界団体が主催していた展示会に疑問を持っていながら「おかしい!」と声を上げることができなかったようです。付き合いだから、他にいい方法が見つからないからという理由で、だらだら続けてきてしまいました。

 ところが、コロナで展示会ができなくなったため、不幸中の幸いで方針転換したようです。長い間、大規模展示会に出展するだけの展示会から、展示会自体は小さくても本物の見込み客を集客し、一定の成果を出そうという展示会に方針転換です。しかし、展示会自主開催のノウハウは全くありません。しかも、ただ開催するだけではなく、それで儲ける必要があります。

 また、業界団体主催の展示会に出展しているときは、営業社員はそれなりに一生懸命やっていましたが、事務方の社員は全く知らん顔です。展示会出展期間中に「そんなことやってたっけ!?」と言うつわものもいます。後方支援は全くありません。

「これは難儀な依頼だなあ」などと思ってはいけません。コンサルタントの腕の見せ所です。難しい案件ほど意欲が出ます。「先生、お願いします!」の一言で、「よっしゃあ、一丁やるか」ということになりました。