第105話 ショールームの接客で最も大切なこと

 接客のやり方はいろいろあって、どのやり方が正しいというものではありません。自分のやり方が正しいのです。しかし、そうはいっても、お客さんを満足させなければなりませんので、最低限なやり方というものはあるでしょう。コストをかけないでお客さんを満足させることができれば、商売は儲かるでしょうが、「満足させるために過大にコストがかかってしまった」「ルーチンから外して満足させた」では、本末転倒となります。

 B社は果樹農園を経営しています。ブドウ、キーウイ、ブルーベリーなどを市場に出したり、観光農園としてお客さんを呼んでフルーツ狩りで楽しんでもらっています。ある時、こんなお客さんが来ました。

「○○という品種のフルーツ狩りをしたいんだけど、できますか?」

 ちょうど現場に居合わせたB社の専務が対応しました。

「すみません。今はまだ、その品種はできないんです」「こちらの品種でしたらできます」

 しかし、お客さんは○○品種をお目当てに来ていたため、「残念、しょうがないから帰る」と言って、何もせず帰ってしまったというのです。

 この話をあとで聞いたB社の社長は、息子の専務を呼び出し「せっかく来てくれたお客さんを逃す手はない」「○○品種はもうすでに完熟していてお客さんに採ってもらうことはできたはずだ」と詰め寄りました。

 専務は「一組だけ皆と違う対応をすれば、それが普通になって現場が混乱する」「お客さんを逃したのは痛かったけれど、仕方ない」と反論。親子喧嘩になってしまいました。

 この場合どうしたらよかったのでしょう。このお客さんが来たのは平日で、観光農園はかなり空いていました。また、コロナ騒動で例年よりお客さんの入りがよくない状態。したがって、一組でも多くお客さんを呼びたいと思っています。

 こんな状況なので社長は「ちょっと手間をかければお客さんは満足してくれたのに、しゃくし定規に対応したらますます来園者は減るばかり」と、怒り心頭です。

 しかし、息子の専務は「ルールはルール。この品種が終わってから○○品種ということになっている」「従業員の前で経営者がルールを破ったら示しがつかない」と譲りません。

 社長が正しいか専務が正しいか?どちらも間違っていないといえますが、B社と当日の状況を勘案すれば社長が正しいと当社は考えます。ただし、こういった事例があることを想定して、その対応の方法を社員全員に伝えておかなければなりません。

 特に常連客の場合は、社員全員に常連客だということを周知させる必要があります。特別な対応ということではなく、周知させることで「いつもありがとうございます」の一言が言えるようになるからです。それで常連客は満足します。

 中小企業のショールーム接客で最も大切なことは、豊富な展示品でも、詳しい製品説明でもありません。笑顔であいさつ、丁寧な対応です。そして、来館が予定されている場合は、スタッフ全員が、来館者の関心ごとや困りごとを知っているということです。来館予定者の情報は、絶対に入手しておかなければなりません。ここは営業社員との連携が不可欠です。

 お客さんの満足度は、フルーツの味や製品の良さ以上に、接客が影響します。結局、最後は「人」だということです。