第101話 土木会社殺すにゃ刃物はいらぬ、雨が3日も降ればいい
いきなり物騒な言い回しで恐縮ですが、外の現場で働く方たちは、工事の工程が天候に左右されやすいといえます。当然、雨が降れば現場は休工ということになり、工期が迫っている場合はやきもきします。穴を掘っている現場であれば、土砂崩れで生き埋めになってしまう場合もあり、危険ですので雨が降れば基本的にお休みです。
今年も、梅雨の末期の大雨とお盆の長雨で土石流や土砂崩れが発生し、土砂に埋まってしまい亡くなられた方がいます。この土砂崩れですが、想像以上に大変大きな圧力がかかります。例えば、工事で穴を掘る場合、深さが何㎜以上は長さ何㎜の矢板(土留め板)を設置しなければないという、細かいルールがあります。そうでなくても、危険な場所には必ず矢板を設置しなければなりません。なぜなら、いったん土砂が崩れて膝や下半身だけでも埋まってしまうと、一人では脱出できず危険だからです。そして、脚や骨盤を簡単に骨折してしまいます。運が悪ければそれだけで死亡してしまいます。それほど土砂の勢い、圧力はすさまじいものがあります。したがって、土木の方は雨降りには仕事ができないというわけです。
「細井先生、この間の長雨にはまいりました。全然仕事ができませんでした」 「おかげで工程が狂って、今、大忙しです」
こう話すのはC社の社長です。いわゆる土木仕事が多い会社で、毎年のことながら長雨には泣かされています。しかし、いつものことですので対処の仕方もわかっていて、なんとかやりくりしています。
「雨は上がりましたが、地盤が水を含んでいますので、気を付けて仕事するようにしています」 「実は、もう一つ気になることがあるんですが、長雨後の晴天続きで、今度はうちのショールームにお客さんが来なくなっちゃったんです」 「あちらを立てればこちらが立たずで、うまくいきません」
この会社、土木業のほかに土木の資材を卸す商売をしていて、ショールームを持っています。ところが、そのショールームをうまく回せないため、今回、ご相談にいらっしゃったのですが、その相談というのがこのことです。要は、安定して来館客がないということです。
土木のほうは、雨が降れば仕事はお休みです。しかし、仕事は工期に間に合わせなければなりませんので、休んだ分、雨上がりはとても忙しくなります。ところがショールームは、天気が良ければ皆さん外で仕事をしていますので、来館者はいないということになります。それでは雨の日には来館するかというと、そんな日は外出したがりませんので、やはり来館者は少ないということになります。
「じゃあ、どんな天気ならいいの?」ということですが、天気というよりタイミングです。特に、公共工事に携わる方たちは、工事が工期を迎え、一段落した4月~6月です。これ以外は、土木の方たちをショールームに呼ぶのは、なかなか難しいといえます。
「じゃあ、なんでショールームを作ったの?」ということですが「この経営者の方に憧れと妄想があったから」としか言いようがありません。
「だから、先生にコンサルティングを依頼しているんです!」 そういわれればこちらも意地です。何とかしようと思うのですが、まだ、ご相談にいらっしゃっただけで、この会社のことがよく分かっていません。
コンサルティング契約となれば全力でお手伝いしますが、「だから言わんこっちゃない。問屋や建設業が、自前でショールームなんか作っちゃダメって言ってるじゃない」といいたいところをぐっと我慢して「社長、一緒に頑張りましょう」と自分自身を鼓舞しています。
まあしかし、何とかする方法はあります。この会社の社長は気が付いてはいませんが、ショールームを回せないのは外部環境に原因があるのではなく、内部に原因があるのです。ここを少し深堀すれば、必ず解決策は見つけ出せるでしょう。
ショールームは、経営者の方の憧れや夢でもありますので「作っちゃいけない」とまでは言いませんが、作ったショールームをどのように回すのか、そこをよく考えて作っていただきたいものです。作ってから「どうしよう?」では、回すことはまずできません。