第87話 問題や問題解決の糸口は現場に落ちている

「問題や問題解決の糸口は現場に落ちている」

 よく言われる言葉です。確かに現場に行かなければ分からないことが多いですし、どんな問題が潜在しているのか、それが顕在化したときの解決方法は何か、全て現場で予測を立て計画することになります。

 当社では以前、パンデミック対策として危機管理を徹底する取り組みを行ったことがありました。起きた現象に対しどう対処するのか、あらかじめ検証し対策を練ったのです。ところが、この度のコロナ騒動は想像をはるかに超えており、「なすすべなし」状態に陥りました。そのうち好転するだろうと願望を込めた予想は見事に裏切られ、多くの人々が苦しんでいます。

 それはさておき、会社の危機は当然管理されているはずですが、そうとも言い切れないのが現状です。皆さんの会社はいかがでしょうか。

「細井先生、消防署に見つけられて返ってよかったです」

「別に隠していたわけではなかったのですが・・・」

 この社長が経営する会社の社屋は、消火栓、消火ポンプ、消火水槽などの消火設備が義務付けられていました。決して消火設備がなかったというわけではなく、あるにはあったのですが、消防署がテストをしてみたところ作動しなかったということです。

 事務所の消火扉の前に机があり、いざという時に扉があかない。ポンプ室は洗濯小屋になっていて、洗濯機や掃除道具で足の踏み場もない。これでは消防署も改善命令を出さざるを得ません。

 しかし、問題はここだけにとどまりません。実はこの社長、この事実を知らなかったのです。現場を見ていなかったということです(知っていたら、こんなことにはならなかったはずですが)。社長が会社のすべてを把握するということは難しいですが、それでも現場を見ていれば気づくはずです。それを怠ったため、消防署から指摘を受けたのです。

 この様なことがあって、この社長、反省しました。消火扉をふさいでいた机やポンプ室の洗濯機を移動し、掃除道具を片付け、事務所内も倉庫も徹底的にチェックしていきます。

「おい、ここはダメだぞ。散らかってるので片付けてくれ」

「この棚は邪魔なのであっちへ移動してくれ」

「この製品はもう使えないから廃棄してくれ」

 この様に現場を見回り出しました。社員は今までになかったことですから大慌てです。

「これ、なんでこんなところにあるんだ。担当は誰だ?」

 厳しい追及に周りはピリピリしだしました。それでも、ほったらかし状態だった社内が少しづつ整理整頓されるようになります。

「ちょっと待てよ、今まで狭い倉庫だと思っていたけどこんなにあいちゃったのか」

「この空いた場所を何かに使えないか?」

 ちょうどこの頃、たまたま当社のホームページを見た幹部社員の方が、社長に当社を推薦してくれたようです。社長は気に入ってくれてセミナーを受講し、個別相談を経てコンサルティング契約となりました。

「先生、この空きスペースどう使えばいいですかね」

「ウチはショールームって柄じゃないので、展示会に使いたいんですがどうでしょう」

 ということで、展示即売会を開催することになりました。ただ、展示会と言っても、やったことのない会社にとっては非常に重荷になります。まず、効果的なやり方が分かりません。どんな製品を展示するのか、いつやるのか、ターゲット顧客は、チラシをどう作ればいいのか、費用は、・・・。クリアすべき課題は山ほどあります。

 ただ単に展示会を開催するなら、やっつけ仕事ですのでそれほど難しくはないですが、展示会で結果をだし次につなげていくとなると、綿密な計画と多くの社員や取引先の協力が必要です。決して片手間で段取りできるものではありません。

 当社のコンサルティングは、コンサルティングの効果測定として、その結果を検証するまでを1つのパッケージにしています。したがって、コンサルティングを開始したからと言って、慌てて展示会を自主開催してもらうことはありません。じっくりコンサルティングを受けてもらい、1つ1つ課題をクリアしながらショールーム営業のしくみを導入していきます。

 この会社の場合、社長が現場を知らなさ過ぎたことを、偶然にも消防署に気付かせてもらいました。社長が現場を知り、社内の整理整頓ができたことで空きスペースが生まれ、展示即売会の自主開催に至りました。何が幸いするかわからない事例ですが、一番のポイントは、社長が自身を反省しチャンスにつなげたということです。社長は所轄の消防署に感謝しています。

 展示即売会の結果ですか?大成功とまではいきませんでしたが、まあ、こんなもんでしょう。初めてにしては。しかし、経験を積みかさねれば結果は必ず良いものになります。一定の手ごたえをつかんだ社長は、次に向けて意欲的です。