第86話 お坊さんビジネス

 皆さんはモノやサービスを購入するとき、そのモノが持つ価値と価格を比較しながら購買しますね。価値≧価格なら購買する動機となり、価値<価格なら基本的に購買されません。この場合、価値と価格が分かっていることが条件になります。どちらか一方もしくは両方が分からない場合、購買するかしないか検討されることはありません。

 しかし世の中には、その価値も価格も分からないのに購買するケースがあります。その1つがお坊さんです。

 誰か人が亡くなった時、お坊さんにお経をあげてもらいます。「いや、うちはキリスト教だからお坊さんじゃなくて牧師だ」という方もいらっしゃるでしょうが、それはそれとして通夜、葬儀にはお坊さんは必須です。

 この時お坊さんに支払うお布施は、価格表があるわけではありません。本来は謝礼であり、地域、宗派によって相場はありますが、いくらと決まったものがあるわけではありません。謝礼ですし、相場であって価格ではありませんので、お坊さんから「○○円です」とは言ってくれないこともあり、いくら包むのか、初めての人にとっては非常に悩ましいところです。

 桜が散って新緑が美しく輝き始めたころ、お世話になった社長が亡くなりました。長い間病気と闘ってきましたが、高齢だったこともあり遂に最期を迎えたということです。

「先生、お坊さんに支払うお布施って何か変ですよね」

「価格も品質も分からないのにサービスを買うなんて、ビジネス感覚で言えばゼッタイおかしいです」

 通夜、葬儀を終え、ひと段落着いた頃に亡くなった社長の息子がこう言いました。息子は、そのお布施が決して少ない金額ではなかったため「なんでだろう?」と思ったらしいのです。

 一度こういうことを経験するとその必要性とか相場観が分かるのでしょうが、初めての人にとっては全く不明朗会計、いい加減、おかしいと感じるのは致し方ないのかもしれません。しかし、いくら慣れた人であっても、我々ビジネスの世界で生きている人間にとっては、やはりおかしいと感じるのです。お布施は謝礼だからと理解したとしてもです。

「先生、お坊さんをビジネスと捉えた場合、この商売の将来性はどうなんでしょう?」

この質問には困りました。たいていのことには即答しますが、さすがにこの問いかけには、

「う~ん、そうですねえ、ちょっと答えるのは難しいですが・・・」

「たぶん10年とか20年では変わらないでしょう」

 などとあいまいな返答しかできませんでした。なぜならビジネスではなく、人の心であり、合理性ではないからです。いうなれば「そういうものだ」の世界だからです。

 以前、ある葬儀屋さんが、それまで不明朗な価格だった葬儀ビジネスに一石を投じたことがあります。1つ1つのサービスに価格をつけ、一覧できるようにしました。これで消費者(?)は安心してサービスを受けることができるようになったのです。それまでは葬儀屋さんに言われるまま料金を支払っていました。なぜこの価格になるのか全く分からなかったのです。葬儀ですから変に値切るわけにもいかず、他社と比較するわけにもいかず、そういう状況で利用していたということです。

「先生、別に文句をつけているわけじゃないんだけど、なんかやっぱりおかしいよね」

「でもまあ、葬儀屋さんはきちんと価格表があって、その中からサービスを選ぶことができて、概算の見積もりも出してくれたんだから、まあ良しとしましょう」

 ということで、なんとなく納得して父親を弔うことになりました。

 理屈で説明できないことは世の中にたくさんありますが、ビジネスにおいては合理性、透明性が必要です。コンサルタントの世界でも、実は、不明朗会計が横行しています。

 価格を示さず何をするのかもわからず、コバンザメのようにいつまでもクライアントに張り付いてうまい汁を吸っている自称コンサルタント。あなたの周りにいませんか?コンサルタントはお坊さんと違います。合理性、透明性が必須です。

 お坊さんビジネスならまだしばらくは通用しますが、コンサルタントはそうはいきません。なぜなら、サービス、料金、契約期間などが明確になっているダイナミックコンサルタントが増えているからです。そして不明朗会計のコンサルタントは駆逐されつつあるからです。

 あなたは、コンサルタントをお坊さんビジネスと勘違いしていませんか?