第81話 コンサルタントなんて役に立たない!?
ある年の暑い夏の日、流れる汗を拭きながらその社長は当社にやってきました。
「こんにちは、ようこそ暑い中を」
そう型通りのあいさつをし、席を勧めて冷たいお茶を差し上げ、一息ついたところで
「大体のご用件はうかがっていますが、もう少し詳しくお聞かせください」
そういって切り出しました。
「先生、誠に申し訳ないのですが、コンサルティング契約はなかったことにしてほしいんです」
この会社の社長、以前、当社のセミナーを受講し気に入っていただいたようで、個別相談まで進んでいました。そこで、是非コンサルティングをと口約束ながら「契約」したのですが、どうやら周りの幹部から止められたらしいのです。
「実は以前、コンサルタントを雇ったことがあって、それが全然役に立たなかったんです。200万円も払ったのに」
こういう事情があって、社長独断で申し込んだ当社とのコンサルティング契約を、幹部が、以前の二の舞になりかねないからと言って止めたということです。
以前のコンサルタントが、どこのどういったコンサルタントかは全く知る由もないですが、確かに役に立たないコンサルタントは存在します。コンサルタントと名乗りながら、どこかで習ったようなマーケティングのフレームワークを持ち出し、専門用語を並べたて、クライアントを煙に巻いて報酬を受け取る。そんなコンサルタントがいるのも確かです。
しかし一方、まともなコンサルタントも大勢いるのも確かです。クライアントの成長のために、ひと肌も二肌も脱いで献身的にコンサルティングする。クライアントの成功が自分の成功と考える、そんなコンサルタントもいます。
この会社が以前契約したコンサルタントがどちらなのかはわかりませんが、もし前者であれば、それに引っ掛かったクライアント側にも多少の責任はあります。よく調べずに契約してしまったかもしれません。自社との相性もあるでしょう。しかしこの場合、圧倒的にコンサルタント側に問題があります。こういうコンサルタントがいるから他のまともなコンサルタントが迷惑するのです。
もしコンサルタントが後者であれば、コンサルティングがうまくいかなかった原因はクライアント側にあります。クライアントが真摯にコンサルティングに向かい合わなかった可能性が高いです。
どんなに優秀なコンサルタントであっても、クライアントがコンサルティングに向き合ってくれなければ成果は出ません。お互いにとって不幸な出来事になってしまいます。当社では、こういったことを避けるためにセミナーや個別相談を行っているのですが、なかなか理解していただけないお客様もいらっしゃいます。セミナーにおいては社長以外にも経営幹部の方もご一緒にと勧めています。2人で判断していただいた方が間違いないからです。
「先生、本当に申し訳ない。取締役連中がやめとけと言うもんだから・・・」
「社長、大丈夫です。気にしないでください」「またご縁がありましたら、その時は幹部の方とご一緒にセミナーに来てください」
そう申し上げて社長を見送りました。
当社のコンサルティングは、専門用語をほとんど使いません。マーケティング3.0、SWOT分析、5フォースモデル、PEST分析・・・。営業系のコンサルタントにとって知識や理論として身につけておくべきフレームワークなどではありますが、それをコンサルティングの実践で使うことはほとんどありません。なぜならクライアント1社1社事情も考え方も違うからです。それなのに窮屈なフレームに当てはめて、こうあるべきだなどというコンサルティングは邪道だと思うからです。
また、決定的な理由として、分かりにくいからです。コンサルタントの使命として、分かりやすくコンサルティングするというのがあります。言葉は悪いですが「タコ社長でも分かるように」とか「サルでもわかるように」ということが言われています。それくらい分かりやすさというのは大切なことです。
冒頭の社長が受けたコンサルティングは、もしかしたら、専門用語満載の分かりにくいコンサルティングだったかもしれません。当社はそうならないよう、また、クライアントのお役に立てるようコンサルティングを進めてまいります。