第78話 もったいないショールームをなくしたい

 ショールームには自社に最適な形態があると当社では考えています。この最適な形態を外すとどうなるか。ボタンの掛け違いのように営業戦略と組織がずれてしまい、ショールームを回せなくなります。そうなった場合、哀れ大切なショールームは「物置」と化し、だれも見向きもしないデッドスペースへと退化します。

 それではなぜ最適な形態を外してしまうのでしょうか。原因の1つにショールームというイメージが固定観念としてあるからです。ショールームと言えば車や水回りなどの耐久消費財を展示する場所という、ハコモノのイメージが強く、ショールームを作ると言えばこの様なハコを作ってしまうからです。

 固定観念にとらわれずにショールームを大きく広く解釈した場合、移動式もあれば屋外型もあり、無人もあります。その企業の業種や取引形態に合わせて作るべきを、固定観念で作ってしまうところに間違いが起きるわけです。

「先生、おかげさまでショールームの稼働率が上がってきました」

「売り上げも徐々に改善されてきました」

 先日、ショールーム営業コンサルティングのプログラムを一通り終え、ショールームの在り方を考え直し、形態を変えた会社の社長がこう話してくれました。

 この会社、以前はハコモノのショールームをお持ちでした。ショールームと言えばこういうものと思っていたと社長は言います。作ってしばらくはオープン記念と称してイベントをやったり、取引先も興味をもって見に来てくれていました。やがて落ち着きだし、半年たったころにはほとんど来館者がなくなりました。今では閑古鳥だけが鳴く始末。社員は現状に慣れてしまい、誰も活用しようとしません。見るに見かねた社長が、何とかしたいと言って当社に相談に見えたというわけです。

 この会社は産業用のプラスチック成型部品を作っている会社で、業界では一定の技術力のある会社だと認知されています。中小企業ではありますが、この分野ではパイオニアと言えます。その技術力をPRしようと数年前にショールームを作ったわけですが、ハコモノのショールームを作ってしまったため活用できずに困っていました。そこで当社が移動式を提案し、それを活用するための組織づくりに取り組んだのです。

「先生、やっぱり待ってちゃだめだね」

「技術力に自信があるなら積極的にPRすべきだった」

「この移動式ショールームなら、こちらからお客様のところへ行けるので、お客様にとってもうちにとってもメリットがありますよ」

 ハコモノのショールームを作った当初はボタンの掛け違いをしていましたが、何とかかけ直しができました。移動式ショールームを稼働させるしくみも同時に作りましたので、よほどのことがない限り回し続けることができます。

 ショールームを作るときは、決して憧れや妄想で作ってはなりません。憧れや妄想は一瞬にして現実に変化します。そしてその後、後悔がやってきます。しかし仮にそうであったとしても、この会社のようにやり直すことができます。ショールームは自社の業種や取引形態に合わせて作ることです。

「もったいないショールームをなくしたい」

これが当社の、設立当初からの一貫した願いです。

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