第68話 偽コンサルタントにご用心 その1
世の中には星の数ほどコンサルタントと称する人はいますが、ごく少数ながらニセモノも存在するのは事実です。クライアントを指導するほどの技術・能力を持っていない、約束したことを守らない、見かけはすごいけど中身は空っぽなどなど。こういう輩がいるからコンサルタントという職業が怪しいと言われるのかもしれません。しかし、コンサルタントでなくても普通の人間として、これじゃあマズいでしょと言わざるを得ないような話があります。少し前の話ですが、今回のコラムはそんな話を、今週と来週にわたってお届けします。
写真館を経営する個人事業主がいました。この方、デジタル写真が主流になる何年も前からデジタルの時代が来るのではないかと考え、写真の在り方を色々模索し可能性を探ってきました。そしていち早く最新の印刷機を導入し、写真印刷のスピードアップと品質を向上させ、地域の企業、学校、アマチュア写真家の要望に応えてきたのです。しかし時代は急激に変化・進化してきたため、初期に導入した印刷機はもはや古くなり、最新の印刷機でなければ時代についていけなくなりました。
そこでこの経営者の方、最新式の印刷機を導入することを決意。それにあたり補助金を活用できると聞き、補助金獲得のための書類を作成するコンサルタントを探したのです。この方の知人の紹介もあり、あるコンサルタントと契約することになりました。手付金を支払い、締め切りまでに審査に通るレベルの申請書を作成する契約を交わしました。
ところが、契約して1か月も経つのに書類作成に取り掛かりません。問い合わせると締め切りに間に合うようにやるの一点張り。イライラして待つうちにようやく書類が送られてきました。中身を見てみるとなんと誤字脱字だらけ。事業主の名前や屋号が間違っている、チェックすべきところにチェックがない、空欄も目立つという有様。極めつけは「申請書の骨子は作ったからあとは自分で調整、記入、工夫してください。頑張ってください!」これにはこの経営者の方愕然。慌ててこのコンサルタントと連絡を取り、契約を解除したそうです。
なぜこのようなことになってしまったのか。知人の紹介ということで信用してしまった、この経営者の方に責任はあるでしょうか。ないとはいえないでしょうが、やはりこのコンサルタントに大きな問題があると言わざるを得ません。コンサルタントを名乗る以上、プロのレベルでなければなりません。とても人からお金をいただくレベルになっていないのですから、仕事を請け負ってはいけません。全く当たり前のことを言っているのですが、それができない人がいるのです。
クライアントでもそれぞれの仕事はプロとしてやっているわけですので、書類1枚見ればその人の仕事の能力は判断できます。このコンサルタントはそれくらいのことも分からなかったのでしょうか。そうであればビジネスとしての価値も人間としての価値も全くない人だということです。
コンサルタントという職業は、目に見えないノウハウを提供するものです。そのノウハウが際立っているから、価値があるからクライアントの皆さんは高いお金を払っているのです。したがって、クライアントよりもコンサルタントのほうが契約に慎重でなければなりません。そうでなければコンサルティング業界全体が信用を失い、まじめなコンサルタントが迷惑をこうむるだけだからです。自分の首を絞めただけでなく、業界の信用を落としたこのコンサルタントには怒りを覚えます。即、退場してもらいたいものです。
ところで、この写真館の経営者の方、その後どうしたかというと、結局自分で作成して申請しました。そして見事審査に通って補助金を獲得したそうです。そして更なる高品質の写真を提供して多くの方に喜ばれています。