第62話 感謝祭VS相談会
「先生、こんなチラシが入っていたんでちょっと行ってみたんですけど、会場の大きさの割には凄い人でしたよ」
「しかしなんですねぇ、あれで商売になるんですかねぇ」
先日、当社のお客様である、住宅関連会社の社長の自宅に「リフォーム相談フェア」と銘打った新聞折込が入っていました。この時期にリフォームフェアといってイベントをやるとは珍しいと思い、参考にしようとご夫婦で出かけて行ったそうです。
それほど大きくない会場についてみるとたくさんの車。やっとの思いで駐車スペースを見つけイベント会場へ。子供連れの若い奥様方やお年寄り夫婦が多く来ていて、会場には子供のための遊具がたくさん。子供たちはキャーキャー言いながらはしゃぎまわっています。奥様方は子供を気にしながら井戸端会議の真っ最中。いくつも輪ができていました。
お年寄り夫婦は模擬店で提供される食事や飲み物をおいしそうに食べています。そして若い奥様やお年寄り夫婦の手には大きなビニール袋。中に入っているものはどうやら、トイレットペーパー、洗剤、ラップ、ティッシュペーパーなど。それほど高額なものではなく、日用の必需品。まあそれでも袋いっぱいに入っているのでお得感満載です。
この社長が行った時間がちょうどお昼時だったので、皆さんお昼をいただいて、来場記念をもらって、くじをひいて景品をもらって、おしゃべりして・・・。天気はいいし暖かい日で何より。食事の時以外はマスク着用、アルコール消毒、検温、なるべく人との距離を取ってもらうなど、コロナ対策も万全です。
昼の3時を過ぎるころにはボチボチ帰る人もいて会場は空きはじめます。お腹はふくれるし、子供は遊び疲れてぐったり、お年寄り夫婦は寒くならないうちにと早々に帰り支度。「あーあ、いい1日だった」というイベントだったようです。
ここまで読んで皆さん「なんか変!?」と思いませんか?そうです、リフォーム相談フェアなのに、リフォームの商談や契約といった話が全く出てきません。また、来ている人は子供、奥様、お年寄り夫婦で、家のご主人はそれほど見かけていません。ということは、集まった人たちの目的は飲食と景品だったということです。中には展示品を見て回る人もいたようですが、リフォーム会社の少人数のスタッフはごった返す人や車をさばいたり、景品を用意したり、子供たちの安全に気を配ったりで、商談どころではありません。相談会というよりは感謝祭になっています。
しかしこれで、本当にコストに見合った受注ができているのでしょうか?小資本のリフォーム会社がお金をばらまくようなイベントを行っても長続きできるでしょうか。できるというのであれば、よほど利益率が高い商売をしなければなりません。しかも社員は休日出勤を強いられ、イベントの準備、後かたずけなどで時間と労力を取られます。そうなれば普段から、イベントのための時間を確保する合理化や効率化が求められます。このリフォーム会社ではそれができているということなのでしょう。
しかし実は、現実的には合理化や効率化をせず、このような感謝祭的なイベントを開催する会社が多いのです。商圏内の不特定多数にチラシを撒き、高割引率で関心を引き、飲食サービスや景品を渡して多くの人を集める。それで自社を何とか知ってもらい、リフォーム需要が発生したときには先ず声をかけてもらう。そういった発想なのでしょう。
少しわき道にそれますが、こういった屋外で行うイベント会場も当社ではショールームと呼んでいます。ショールームの「show」とは、「見せる」という意味です。「room」とは「部屋」という意味がありますが、実は「余地」とか「場所」という意味もあります。そうすれば、「showroom」とは「見せる場所」という意味です。したがってこういった屋外の展示会場やイベント会場も「ショールーム」なのです。
ショールーム営業をきちんと回せている会社なら、感謝祭的なイベントを開催しても費用対効果はあるでしょう。「感謝」とは言いながら、きちんと商売につなげられるしくみをもっているからです。ところが、ショールーム営業を回せていない会社が感謝祭的なイベントをやっても費用対効果はありません。費用だけ掛かり、社員は疲れ果て、後には何も残りません。感謝祭自体が悪いと言っているのではありません。どうせやるならショールーム営業を身につけてからやったほうがいいということです。そうすればおのずと、感謝祭ではなく相談会になるはずです。
お金をたくさん使い、社員を忙しくさせ、その挙句に何も残らない感謝祭をやりますか?それとも本当に需要のある人にアプローチし、自社の価値を伝え、費用対効果の高い相談会をやりますか?派手で人が多く集まるが中身のない感謝祭か、地味だけど本当に需要のある人が集まり中身の濃い相談会か、どちらですか?
B2BでもB2Cでも、人を集めるだけのイベントがいかに多いか。このコロナ禍で需要が落ち込む中、お祭りやってどうするの?といわれそうです。本当の需要を掘り起こすためにはショールーム営業を身につける必要があります。効果は、間違いなくあります。