第36話 ZOOMは使い方次第
「細井さん、ZOOMは使い方によっては便利だけど、使い方を誤ると大変なことになりかねないですね」先日、クライアントの会社でZOOMを使った社内会議があり、オブザーバーとして参加した後に、社長が話しかけてきた言葉です。
まず、「使いようによっては便利」というフレーズです。どんなに遠く離れていようと、ZOOMのアプリが入ったパソコンやタブレットがあれば、誰でもどこでも手軽に相手の表情を確認しながらコミュニケーションが取れます。そいいう意味では非常に「便利」と言えます。また、メールや電話よりも、相手の姿が見えるということで話しやすく、より正確に伝えたいことを伝えることができます。メール、電話、ZOOMそれぞれ良さがあり、いつ何を伝えるかによってその手段を選ぶことが重要ですが、少なくとも電話より、伝わる正確性という面においては高いと思います。
また、「使い方を誤ると大変なことに」というフレーズは、伝える内容や重要性をよく考えて使わないといけない、ということを示唆しています。学校の授業だったり、雑談に近いようなコミュニケーションだったり、ある程度結論が見えているような会議であれば非常に有効だと言えるでしょうが、お互いの心理を探りながら、ある結論に導いていくような議論には使いにくいということです。
お互いの姿は見えているのですが、その場の空気感というものが共有できていない以上、何か癇に障る発言をしてしまうと収まりがつかなくなる可能性があります。したがって参加者が一歩引いて議論することになり、形式的な会議になりかねません。例えば、不用意な文章を書いてメールで送ってしまったために、関係がぎくしゃくしてしまったという人もいるでしょう。ZOOMの場合、そこまでいかなくても注意が必要だということです。
一方で、冒頭のメリットの他にもZOOMの良いところがあります。会議中に発言をしているにもかかわらず、話の腰を折って自分の主張をしだす人。こういう人どこにもいますよね。ところがZOOMだとこういう現象が全くないとは言い切れませんが、確実に少なくなります。このことの裏には多分に、同じ空間にはいないという壁のようなものがあると思われます。この壁がいい面に出る場合もあれば、うまく相手に伝わらないという悪い面にもなりえるということです。
今回、この会社では初めての試みであり、様々な問題点や課題は残ったものの、ZOOMの有効性や特長をよくつかみ活用したため、目に見える事故は発生しませんでした。しかし何か、もやっとしたものを残したまま終了したことは否めません。もっと突っ込んで議論すべきを、遠慮してそうしなかった、もしくはできなかったと思われる場面がいくつか見られたからです。
たぶん今後、オンライン会議という手法は、いろいろな場面で多くの人が利用するようになるでしょう。特に、コロナウイルスと共存している最中はそうなるでしょうし、終息後も習慣化していれば、オンラインでということが当たり前になります。しかし、便利さは両刃の剣のようなもので、冒頭の言葉のように、使い方を間違えると、取り返しのつかない事態に発展する可能性があります。
直接会って話すということは、言葉以外の要素も含めて会話しますので、たとえ言葉が間違っていてもそれをカバーする手段があるということです。他方、メールのように文字情報だけであれば、その言葉の裏にある意味は伝わりにくく、カバーする手段がありません。その点オンラインはカバーする手段は多いと言えますが、やはり空気感とか熱意とかは伝わりにくいものがあります。その点を十分に注意して今後活用すべきですが、オンラインが一般的になり、伝える手段が多様化することはとても良いことだと思います。たとえそこに問題があったとしても、メリットのほうが大きいのではないでしょうか。