第34話 分かりやすさが命

「この人が言っていることは分かりやすいんだよな」「こういう人が政治家であるべきじゃないか」こう言っていたのは、ビジネス街で街頭テレビを見ていた中高年サラリーマン男性の2人です。その話を横で聞いていて「その通り!」と思わず叫んでしまいました。

「この人」というのは、大阪の元政治家で、今は一般市民だということですが、度々メディアに登場する人です。緊急事態宣言が出ている今、営業自粛などで経営が成り立っていない中小事業者に対し、政府や地方自治体はどのように支援していくのか、という課題について議論するテレビ番組に登場していました。その語り口が痛快で、ズバッと「こういう時はこういう態度で臨むべきだ」というものでした。

「今、政治家に求められていることは、『俺が責任を持つからやってくれ』と指示を出すことだ」と述べていました。賛否あるにしても、政治家や政治評論家が聞いたらどう思うでしょうね。事実、その番組に出演していたある政治評論家はもうタジタジで、言うことに事欠いて、「あなたには政治家に戻ってもらいたい」などと発言する始末。政治の難しくややこしい世界を、難しくややこしく解説するこの評論家にとっても衝撃的だったんじゃないでしょうか。

 世の中には、専門的な難しい話を難しく話す人がいます。また、やさしい話を難しく話す人もいます。一方、難しい話を一般の人でも分かるようにやさしく話す人もいます。本当に難しいのはどれか分かりますよね。自分の専門分野で、長年研究や勉強をしてきた人にとっては簡単なことでも、そうでない一般の人たちにとって理解するのにはとても難しいことです。それを分かりやすく話し理解してもらうことは、実は至難の業です。

 しかしよくよく考えてみると、「分かりやすさ」というのはどんなことにおいても重要だということです。コンサルタントにとっても、長年経験し学んだことをクライアントに分かりやすく伝えることは、最も重要な課題です。

 テーマ1つ取り組むのに、難しい専門用語や理論を並べ、二度と見ることのないような資料を大量に用意し、グラフや表といったデータを持ち出し・・・。そんなもの見ても読んでも聞いても、全く理解できないにもかかわらず「俺はこんなに難しいこと知っているんだぞ」とばかりに。そんなものはクライアントの役に立たないばかりか邪魔になります。そうではなく、「以前、こういった事例があって、原理原則を踏まえてこのように対処し、クライアントを成功に導きました」という風に、経験と理論をミックスさせて話したほうがよっぽど分かりやすいはずなのに。

 難しいことを難しく話すのは研究者や学者に任せておくべきです。我々コンサルタントにとって大事なことは、自分の持っているノウハウを分かりやすくクライアントに伝え、それにより成功のお手伝いができる、ということです。

 もし、膨大な資料を持ち出して、理論やデータを並べまくって専門用語で理解不能な話をするコンサルタントがいたら、その人は間違いなく偽コンサルタントです。しくみを導入するコンサルタントに、膨大な資料も難解な専門用語も必要ありません。やさしく平易な言葉で、クライアントに分かりやすくコンサルティングできる人が本物のコンサルタントです。